読み物あれこれ(読み物エッセイです)
読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
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兵士たちの肉体 パオロ・ジョルダーノ 著
アフガニスタンへ派兵されたイタリア軍の若い兵士達を描いたというあまり目にすることのない類の本。 兵士たちのこの戦いに対するモチベーションの低いこと。 なんでこんなところへ来たんだろ、任期をさっさと迎えてさっさと国へ帰ろ、ほとんどそういう空気しかないぐらいだ。 9.11テロ直後、アメリカ国内ではアフガン派兵を指示する人は圧倒的に多かったという。 その後のイラクもそうだが、果たしてアフガン派兵に大義はあっただろうか。 9.11テロはタリバンが起こしたわけではない。 ビン・ラディンをかくまっているかもしれない、という容疑だけ。 ましてアフガニスタンの民間人にはさらに何の罪もない。 そして、その敵とみなされるタリバンにしても一旦武器を下ろしてしまえば、民間人との区別がつかない。 アメリカがかつてベトナムで味わったような民間人か敵かわからない、いらいら感を各国の兵士は味わったことだろう。 イタリアの若い兵士たちはその見えない戦いで凄惨な犠牲者を出してしまう。 この本にはいろんなタイプのイタリア兵が登場する。 マザコンの童貞クン。 高額な衛生通信料を払ってネット上の仮想彼女と燃え上がる男。 皆のリーダーでありながらも女に身体を売る男娼だった小隊長。 そして、ほぼ主人公的な役割りなのが、うつの薬を服用する軍医。任期満了になっても帰国を断る人。 フィクションでありながらも「フォブ・アイス」という舞台で起こった惨劇は実際に起こったことをモデルにしているのいだという。 少々眠たいのを我慢する必要はあるかもしれないが、少々珍しいイタリア版戦争文学と言えるのだろう。 24/Aug.2014 インフェルノ ダン・ブラウン 著
今回もラングドン教授が主人公として登場。 テーマは地球の人口問題。 19世紀の初頭には10億人だった地球の人口が20世紀初頭には20億人に。100年で倍。それが次の50年でさらに倍になり、21世紀の頭、つまり現在では70億人を超える。 この100年の間に人類は地球に誕生してからの何万年、何十万年に体験したことの無いような急激な増え方をしているわけだ。 その人類の急増と全く同じタイミングで発生して来たのが、以下の数字のはねあがり方。 清浄な水の需要、地球の表面温度、オゾン層の減少、海洋資源の消費、絶滅種、二酸化炭素濃度、森林破壊、世界海面の上昇。 いずれもこの100年で急増し、近年はおそろしい勢いで増えている。 そして人口増加はますます進んでいる。 このまま放置すれば、人類は滅亡する。 人類を適正な数まで減らさなければならない。 そう考えたのは、ゾブリストという遺伝子工学や生化学の天才学者。 中世ユーロッパで流行した黒死病。 それによって人口が減ったからルネッサンスの黄金時代を迎えられたのだ、と。 彼によると、地球の人口の適正水準は40億までだろう、という。 こういう思想を持った人間が何かをやらかす準備を整えたメッセージを残して自殺してしまったので、ウィルスによる大量殺人を誰しも考える。 それを予定日までに阻止しようと、ゾブリストが残した暗号をラングドンが解読していく、というお話だ。 ネタバレにはしたくは無いが、最終的な解決策は果たしてどうなんだろう。 日本などは少子化問題を喫緊の課題としてあげているが、この解決策だと少子化にはさらに拍車がかかる。 人口減の前に全世界が少子高齢化時代を迎えてしまうことになるのではないだろうか。 それに水の需要や地球の表面温度・・・という上記の問題点は果たして人口増が問題なのだろうか? 最も引き金を引いているのはここ数十年の新興国の急激な発展なのではないだろうか。 特に人口がどこよりも多い近隣の某国などは天然資源を世界に求め、世界の海洋資源も買いあさり、自らの国の環境破壊も著しい。 彼の国では、あの悪名高き文化大革命時の方が世界にはハタ迷惑ではなかったかもしれない。 彼の国以外でもアマゾンやボルネオのジャングルの乱開発。 これらはこれから生まれる人口が減ったところでどうにかなるわけではないだろう。 今生まれている世代だけで充分に破壊しつくしかねない。 各国で文化大革命ではないが、強制帰農のような政策が出て来る以外に方法はないんじゃないのか。 まぁ、そんなことをつらつらと考えてしまうわけだが、何と言ってもこの作者の魅力は歴史・芸術に対するうんちくだろうか。 今回はフィレンツェ・ヴェネツィア・イスタンブール、この3カ所。 行ったことのある人もこれから行く人も一読に値する。ダンテやその時代に興味のある人たちには特にたまらない一冊だろう。 いや上下巻なので2冊か。 15/Aug.2014 USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか 森岡 毅 著
この春以降、テーマパークのからみで一番話題をかっさらったのはUSJのハリーポッターのエリア、「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」。 実はUSJのハリーポーアトラクションへのの取り組みはこの本が書かれた2013年度から遡ることさらに3年前。 当時のUSJはオープンの年の入場者数1000万人を年々下回り、せいぜい700万人。売上予想は450億。 そこへハリポッターをアトラクションを誘致するとなるとその売上の2倍の資金が必要になるというとんでもない投資。 それを、次に来るボールが、打てば必ずホームランとなるど真ん中のストレートだとわかっていて、バットを振らないプロ野球選手がいるか!とばかりに経営陣を説得し、契約までこぎつけさせてしまう。 その代わりにハリーポッター開始までの3年間、新たな設備費用をかけずに売上・入場者数を伸ばす、という使命をこの筆者は達成しなければならない。 その一年目で起こったのが東日本大震災。 日本全国が自粛ムード一色でテーマパークどころの話じゃない。 もはや、3年目の初年度は目標達成は無理だろうと誰しも思う中、大阪府の橋本知事(当時)にかけあって、子供たちを無料でUSJへ招待する。 子供が来れば、親も付いてくるのだ。 その後もハロウィーンのイベント。 クリスマスのイベントなどで客を取り戻す。 USJ=映画のみ、というこだわりも捨て、大ヒットアニメ「ワンピース」のアトラクション。 ゲームソフト「モンスターハンター」のアトラクション。 と、次々とヒットを飛ばす。 そして究極の、既存設備の有効利用がこの本のタイトルになっている「後ろ向きに走るジェットコースター」。 元々のジェットコースターの品質が良かったために、作り直しをしなくても後ろ向きにして安全性が確保できた。 3年目の危機は東京ディズニーランド30周年ともうすぐハリーポッターがやって来る、という期待感から来る入場者の先延ばし感。 前段はこういうかたちで3年間、費用をかけずに入場者数を伸ばしていった逸話。 後段はマーケティングとは、という筆者の考え方が披露されている。 数々の成功をモノにしてきた人にしか語れない話だ。 いやぁ、確かに感心して読み惚れてしまうような話ばかりなのだが、いざそういう仕事をやってみたいか、と問われればどうなんだろう。 採算度外視で好きなことだけやってりゃいいなら別だが、結果が問われる世界だ。 どんな業界だって同じだろう、と言われるかもしれないが、このエンターテイメントの世界、あまりにサイクルが短い。 一つヒットを飛ばした瞬間には次のアイデアの着想に入って行かなければならない。 来るお客さんに常に新しいものを提供し続けなければならない。 やはりなんでもそうだが客側の立場で楽しむのが一番だ。 12/Aug.2014 笑う科学イグ・ノーベル賞 志村幸雄 著
イグ・ノーベル賞とは、俗に「裏ノーベル賞」もしくは「ノーベル賞のパロディ」。 受賞条件は「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」。 とは言いながらも真面目な研究も多い。 日本人の受賞は極めて真面目なものばかり。 ・ハトがピカソの絵とモネの絵を見分けることを発見した研究 ・犬語翻訳機「バウリンガル」を開発した事に対して ・兼六園の中にある日本武尊の銅像に何故ハトが寄り付かないのかを解明。 ・カラオケの発明者に。 ・ウシの排泄物からバニラの香り成分を抽出した人。 などなど。 海外の受賞例はもっとふざけたものが多い、というよりそういうものをピックアップして紹介しているのかもしれない。 ・身長とペニスの長さと足のサイズの相関について ・思春期における鼻クソをほじる行動の研究 ・尿検査の際に患者がどのような容器を持参するか などなど。 わりとどうでもいい。 この本、「イグ・ノーベル賞」という賞を教えてくれるにはもってこいの本だろう。 でもわざわざ買ってまで読む本でもないようにも思える。 この本に書かれている内容は著者が自分の足でイグ・ノーベル賞の主催者や受賞者を取材してまわった内容が書かれているわけではないのだ。 なんならインターネットで「イグ・ノーベル賞」を検索して、その受賞者を一つ一つ見ていけば、この本にあるような内容は充分に拾えてしまうのではないだろうか。 取り立ててやってみようとは思わないが・・・。 04/Aug.2014
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