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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
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希望荘 宮部みゆき

ペテロの葬列の杉村三郎が探偵としてデビューする。

四部作でそれぞれが独立した一篇一遍。
どこかでつながるのかな、と思ったりもしたが、それぞれが独立した短編だった。

死んだはずの人を見かけた。幽霊かどうかを調べて欲しいというのが最初の依頼。

それにしてもこの探偵さん、フットワーク軽いね。動くのなんの。
そんじょそこらの営業マンよりよっぽど稼働率が高いわ。

次の依頼は死ぬ間際に、自分は過去に人を殺したことがある、と匂わせる様な事を息子に言って世を去った老人の息子が、どうしても気になり、父の過去を調べてくれ、という。

三話目は、ペテロの葬列の一連の後、コンツェルンを飛び出した主人公が実家に帰り、そこで後に世話になる蛎殻オフィスというなんでも出来てしまう探偵会社の社長から頼まれごとをする。

自ら探偵事務所を開くきっかけになったのは言うまでもない。
ここでは戸籍の売買というのがキーなのだが、敢えて戸籍を買った人の目的が今一不明。
それにそても蛎殻オフィスさえあれば、世の中に探偵事務所なんて要らないんじゃないか、と思えるほどにこの事務所の存在は圧倒的だ。

四話目は、東日本大震災で行方不明者が相次いだことをうまく利用した犯人のトリックを暴く。

三話目の過去の思い出は、ともかくとして、残りの三話、杉村探偵、かなり積極的に動いているが、その報酬たるや仕事量に見合っているのだろうか。下世話な話だが・・。
いくら独身ぬいなって食わせる相手が居ないったって・・・。

まぁ、ていうような杉村三郎氏だから、みんなに愛されるんだろう。



希望荘 宮部みゆき著
16/May.2017
荒神 宮部みゆき

宮部みゆきという作家、本当に守備範囲が広い人なんだなぁ。

現代の推理ものがあったかと思えば、ファンタジーもの。
SF的なものが出たと思ったらやたらと江戸の時代ものが続いてみたり。

この「荒神」という物語。
時代は江戸の徳川綱吉時代なので時代ものには違いないが、時代ものは時代ものでも、もののけ、というか怪物が登場する。

どす黒い怪物となると、宮崎駿の「もののけ姫」に出てくるタタリ神を連想してしまいそうになるが、その姿がだんだん明らかになってくる。

時には蛇のように移動するかと思えば、時には足が生やしてどたどたと移動する。その時はティラノサウルスのような容姿なのだろうか。
口から硫酸のようなものを出しているのか、そのよだれを浴びたら、火傷で焼けただれる。
身体は鎧の如くで、矢も鉄砲も皆、はじき飛ばされる。
顔には目が無い。
人間は食らうが、他の動物には全く食指が動かないようで、牛馬などには目もくれないどころか、馬からなどは逃げ出す始末。

永津野藩、香山藩という架空の東北の二藩が舞台で、この二藩、関ヶ原以前からの因縁がある。
その二つの藩の間に位置する村にその怪物は現われ、村中の大半の人を食いつくしてしまう。

この怪物、そもそもこの二藩のいがみ合い時代に呪術を用いる一族によって生み出されようとした失敗作だった。
それがその一族の末裔の男の深い業によって蘇った?

これに立ち向かって行く人たち、まさに江戸時代版のブレイブ・ストーリーか?と思わせられるが、意外な形で怪物は昇華していく。

こういう物語って構想を練り上げて練り上げて、書きおろしで書くものなのかなぁ、と思いながら読んでしまったが、巻末に新聞に連載されたものを単行本化されたことが記載されている。
連載しながら、ストーリー考えていそうな雰囲気あるもんね。
新聞に連載小説が載ってても、読んだことがないが、毎日楽しみにしている人ってやっぱりいるんだろうな。

こういう物語、そういう読まれ方が似合っている気がする。



荒神  宮部みゆき 著


05/Jun.2015
小暮写眞館 宮部みゆき

高校生が主人公の物語。

彼の周辺に登場するのが、普通のサラリーマン家庭なのにちょっと変わり種の父親と母親。
引っ越し先に選んだのが、売り手が「駐車場にするしかないか」と思うほどに家としての価値が無い古い写真館。
写真スタジオがリビング。その写真館の看板もせっかくだから、とそのまま残す。

高校生の名前は「花菱英一」なので下の名前の英一を省略して息子を呼ぶ分にはいいが、彼の友人が「花ちゃん」と呼んでいるからと言って、父も母も弟までも「花ちゃん」と呼ぶ。
何かおかしい。

テンコという幼なじみの父親もちょっと変わったキャラクターで、誰に似ているか、と聞かれれば、その世代によって全く別人に見られてしまう人。

ある年代には草刈正雄、ある年代にはキムタク、またある年代には・・と全く別人に似て見える、という不思議な人。

そんな不思議な周囲に囲まれながら、英一はいくつかの「心霊写真」と思われるものの謎を解明する。 
という変な話なのかと思ったら、それは単なる前振りだった。

7年前にたったの四歳で亡くなった英一の妹。
その妹の葬式で、母は祖母をはじめとする親戚から鬼のような言葉の数々を浴びせられ、そんな言葉が無くっても、家族皆が全員自分のせいなのだ、と自分を責めている。


不動産屋の超無愛想事務員の手を借りながら、そんな状態から脱皮していく話でもあった。

それにしても英一君、高校生にしては守備範囲広すぎないか?



22/Sep.2014
桜ほうさら 宮部みゆき

上州だったか甲州だったかの方便で「いろいろあって大変やったねぇ」ということを「ささらほうさら」 と言うのだそうだ。

剣の腕もさほどではなく、犬に脅えて逃げたとのうわさがたつほど。
土いじりをし、庭で野菜を植えるなど、妻から言わせれば武士にあるまじき情け無き夫。ただ、謹厳実直だけが取り柄で誤った道に進むことだけはありそうにない。

そんな父。

そんな父があろうことか出入りの商人から賄賂を受け取った嫌疑をかけられ謹慎させられ、その謹慎中に自らの潔白を晴らすこともなく切腹してしまう。

賄賂のやり取りの証拠として店が出して来たのがまさに自分が書いたとしか思えないほどに自分の筆跡にそっくりな証文だったのだ。

その息子である主人公の笙之介。

江戸へ出て来て、町人の長屋に住み、貸し本屋から頼まれた写本業をやりながら、人の筆跡をそっくり書ける代書屋探しを始める。

それにしても江戸時代の武家にこんな家があるだろうか。

笙之介の母は、いくら位の高い家から嫁に来たとはいえ、夫をないがしろにし、事あるごとに息子には夫が情けないとぼやく。
笙之介の兄は剣の道を極め、母親には自慢の息子。
その兄もまた父を尊敬しようとはしない。
父と性格の似た笙之介は母から疎んじられる。

現代の家庭ならそこらにありそうな話だ。
「お父さんのようになりたくなかったら、勉強しなさい」なんてそこら中で言っていそうだ。

うだつのあがらない亭主を妻が馬鹿にし、エリートコースを貪欲に目指す長男を溺愛し、父に性格の似た次男は相手にすらしない。

さしずめ、江戸時代を舞台にした現代物語といったところか。

現代もまた「ささらほうさら」いろいろあって大変なのだ。



桜ほうさら  宮部みゆき著


17/Jun.2014
名もなき毒 宮部みゆき

世の中にはいろんな毒があるが、もっともやっかいなには人間の毒。

結構な長編である。

主人公氏は金目当てで結婚したわけではない。
結婚相手がたまたま超巨大コンツェルンの総帥の娘だった。
結婚は当然反対されるだろうと思っていたら、すんなりとOKをもらえ、条件としてその企業の社内報の編集部に配属となる。

その編集部へアルバイトの補充で雇った女性が来るのだが、とんでもない毒女だった。

経歴は詐称しているわ、仕事は出来ないわ、注意すれば逆ギレしてアルバイトだから差別するのか、と怒りだし、怒鳴り出し、泣き出し、しまいには物を投げつける、とんだトラブルメーカーだ。

88倍もの応募があった中で選んだというんだから選考者の人の見る目を疑いたい。
前任者が明るい人で、その人の穴を埋めてもらうんだから、当然書類選考だけで選ぶはずはない。
面接をしてこの人なら、と思わせる何かがあったのだろう。
だとしたら、この毒女、相当に演技がうまかったのか。

編集長に向かって、あんたは人の上に立つ資格がない。無責任で無能だ。などと言い捨てて帰った後に出社しない。
そのまま、おとなしくやめるのかと言うとそんなやわなタマじゃなかった。
しばらく無断欠勤の後に現われたので編集長がクビを通達すると、編集長に向かって据え置き型のごついセロハンテープを投げつけて怪我をさせ、その上に、コンツェルンの総帥である会長宛てに編集部のあることないこと書き連ねた手紙を送りつける。
差別をされた。給与を払わなかった。クビだと脅された、セクハラをされた・・・。

これは物語のほんの序章にすぎない。

この本、シックハウス症候群、住宅地の土壌汚染、青酸カリによる無差別殺人事件、老人介護に悩む青年・・・など盛りだくさんのテーマを綴っているのだが、やはりなんといってもこの毒女の存在が一番強烈だ。

彼女、前職でも無断欠勤を心配して自宅まで来た小出版社の社長をストーカーだと訴え、その会社の信用を失墜させるのに成功している。

もっと前には兄の結婚式でスピーチを求められ、泣きじゃくりながら、兄から幼少の頃から性的虐待を受けていたなどと語り、花嫁を自殺に追い込み、親も兄も仕事を失わせるほどのことをやらかしている。

自分だけ幸せになって行く兄が許せなかったのだそうだ。

嫉妬や妬みだけでこれだけのことを成し遂げられるものだろうか。

そのバイタリティーを仕事に活かすなり前向きな事に活かせば、相当優秀なキャリアウーマンになれただろうに。

いや、結婚式場に居た全員を凍りつかせるほどのその演技力、やはり女優が向いているのか。

こんな極端な例はまず実在しないだろうが、人間、生きていれば多少なりともこれの縮小版みたいな毒を浴びることもあるのだろう。

シックハウスにしろ、土壌汚染にしろ、青酸カリにしろ、ずれも「毒」がキーワードなのだが、人間の持つ毒が一番恐ろしい。

そんなことを無理やり考えさせられるような本なのでした。



名もなき毒 宮部みゆき 著


17/Aug.2012
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