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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Dec.2018
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かがみの孤城 辻村深月

2018年の本屋大賞受賞作品。

今年の本屋さん書店員さんたちの一押しはこっちの方面だったか、と少しだけ意外ではありましたが、それはかつての受賞作が
「海賊とよばれた男」
「村上海賊の娘」
「舟を編む」
みたいな結構な大作が多かったからというだけで、決してこの本を貶しているわけではありません。

文科省の出した「学校に行けない子供たち」いわゆる不登校の小中学生数は13万人を超えたとのこと。
中学生に絞れば、全体の4%を超えるのだという。
1クラスに一人ぐらいの割合で存在することになる。
そういう意味では、この辻村さんのこの本の受賞も時流に合ったものといえるのかもしれない。

この本に登場する不登校の中学生たち、ある日自分の部屋の鏡が光りだし、その光に導かれて鏡の中の世界に入って行く。

主人公のこころは中学一年生。
まったくどうでもいいような言いがかりの様なことでクラスを牛耳っていた女子の標的にされてしまい、結果、家に閉じ籠もることに。

鏡の世界の中ではしっかり者の中三女子や、ジャージ姿のイケメンやひたすらゲーム機に熱中する男子、計男女7名。
その世界へ入られるのは3月30日までと期限付きながら、そこは学校に行くより、どこへ行くよりも居心地がいい。

当初は互いのプライバシーに踏み込む質問をしないのが暗黙のルールの様になっていたのだが、メンバの女子一人が学校の制服で鏡の世界に飛び込んで来たことで明らかになる。
同じ制服じゃないか、と。
そう。全員同じ中学だった。
で、勇気をふり絞って学校へ行って学校で会おうという話になるが、約束の日に誰も来ない。他のメンバも同じで皆向かったが誰にも会えなかった。

メンバの中にはそれぞれの現実世界がパラレルワールドなんだ、という人も居たが、このあたりでだいたい、想定が出来てしまった。

そして現実界で母親が相談に乗ってもらい、こころのところへも何度も足を運んでくれるフリースクールの喜多嶋先生はおそらく未来のこの人なんだろう、と想像出来てしまった。

終盤にかけて、何故学校へ行けなくなったのか、全員の事情が明らかになって行く。

親が原因の深刻なものもあれば、自分のついた嘘が原因のきっかけがささいなものまで様々。

途中年度か登場するフリースクールの喜多嶋先生と言う女性が何度か口にする

「闘わなくてもいいんだよ」

「自分のしたいことだけを考えて」

は作者からのメッセージではないだろうか。

中学の3年間など永い人生の中のほんの一握りでしかない。
ほんの一握りではあるけれど、将来の自分を形成させる通過点としてとても大切な3年間でもある。
その3年間がただ辛かっただけでいいはずがない。
この本が、本当に悩んでいる人たちに何かを伝えられたのかどうかは定かではないが・・。


かがみの孤城 辻村 深月著
23/Dec.2018
そして、バトンは渡された 瀬尾 まいこ

17歳ににして四回も苗字が変わる、森宮優子という女子高生。
よほど、複雑な家庭なんだろう、よほど辛い思いをして来たんだろう、誰しもそう思うだろう。
ところが、彼女に不幸な影は微塵も無い。
人が不幸だと思ってくれているので申し訳ない、いじめてくれる継母と結婚して、と同居人である3人目の父親に冗談を言い、冗談で返される。

実の母親は幼い頃に事故死。父親の再婚相手とはすぐに仲が良くなり、母親というよりは友達、いや面倒見のいい姉御みたいな存在か。
父親がブラジルに赴任するからついて来ないか、と言われて、姉御は拒否。
で迷った彼女も姉御についていくことに。

この姉御が優子に注ぐ愛情がハンパなかった。
一見、自由奔放、好き勝手に生きている様に見えながらも、実は優子のためなら自分の人生なんてどうだっていいとさえ、思っていたのではないか、と思えるほどに。

その姉御が優子を託したのが、森宮さんというまだ女子高生の父親にしては若すぎるほどの年齢の男性。
で、彼の優子に対する父としての優しさもまたとんでもないレベル。

優子は父親を3人、母親を2人持った事になるになるのだが、その誰からも愛されていた。それは彼女の根っからの明るさ、人から好かれるキャラクタにによるところもあったのかもしれない。


この本、最後数ページだけでも充分に感動させてくれるが、そこまで読者を引っ張って行かせてくれたのは、3人目の父森宮氏と優子の絶妙な掛け合い。

それに森宮氏の全くトンチンカンな方向でとことん頑張ってしまえるキャラクタ。
始業式と言えばかつ丼だろ、と早起きまでして頑張って作ってくれる。なんでかつ丼なんだ!
元気がない時はギョウザだろ、とえんえんとギョウザが毎日食卓に並んで辟易とするが、そんなトンチンカンも全部優子のためを思ってやっている事なのだ。
だから、優子もそれに応えてしまう。

そんな優しさどうしのぶつかり合いが最後まで読者を放さない要因か。



そして、バトンは渡された 瀬尾 まいこ著
23/Dec.2018
事件現場清掃人が行く 高江洲 敦

一人暮らしの人が増えるとともに孤独死の数も年々増え続けているのだという。
筆者はそんな孤独死や事故死した人が住んでいた部屋を元通り人が住める部屋に戻すという特殊清掃人という仕事を行っている。
これまでに1500人以上の孤独死にの現場を手掛けて来ている。

筆者によれば、一人住まいで誰に知られることなく亡くなった方でも、一人でもその死を悼んでくれる場合は孤独死とは言わないのだそうだ。
本当の孤独死とは、世の中の誰からも必要とされず、亡くなった報せを遺族であろう人に知らせても、関わりたくないと拒絶されるような人の亡くなり方で、確かに孤独以外の何ものでもない。
賃貸の部屋というのは退去時に原状回復をするものだが、そういう人の場合、身内がいたとしても親戚がいたとしても誰も関わりたくない、結果その費用は全て大家さんが負担することになる。

氏が引き受けて来た仕事には、一人暮らしの孤独死だけでなく、自殺のあと、事故死、事件死いわゆる殺人か、そういう部屋も現場検証が終わった後は、そのまま放置される。

彼の仕事で最もきついのはその腐臭との闘い。
あと、同じ自殺でもすぐに発見され、あとを汚さないように気遣いまでして亡くなった方もいれば、死後何週間も発見されないような亡くなり方をされるケースもあり、後者の場合、その腐臭だけでな身体中から出る体液が床面のみならず、何週間、何か月もともなると床下のコンクリまで浸透してしまい、階下に部屋があるような集合住宅では下の部屋の天井にその体液が染み出す。

そんな場合は下のコンクリまでを含めて修復を行って行く。
氏が行った清掃の後はそんじょそこらでは消えない臭いも全くしなくなるまで徹底するのだという。

大変な仕事だ。
誰もやりたがらないだろうが、誰かがやらなければならない仕事でもある。

この本にはそんな修復に事例が数例書かれている。

本のページの中に現場写真を交えて下さるのは親切心からかもしれないが、どうしても本文を読む際に目にせずにはいられない。

写真は巻頭か巻末に集めて下さってもよろしかったのでは?
などと思ってしまいました。

今や国民の4人に1人が65歳以上の高齢者で10年後には、3人に1人が高齢者になると言われている昨今、身寄りのない方の人口も増えているのでしょう。
高江洲氏の仕事ももちろんボランティアではなくビジネスとして行っている。
と、ビジネス面からだけ見ると、まさに成長産業でもあるのだが、そんな割り切りで出来ることではない。
亡くなった方への思い、という大切な心が無ければ手掛けてはいけないしごとなのだろうと思う。

23/Dec.2018
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