読み物あれこれ(読み物エッセイです)
読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
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事件現場清掃人が行く 高江洲 敦 著
一人暮らしの人が増えるとともに孤独死の数も年々増え続けているのだという。 筆者はそんな孤独死や事故死した人が住んでいた部屋を元通り人が住める部屋に戻すという特殊清掃人という仕事を行っている。 これまでに1500人以上の孤独死にの現場を手掛けて来ている。 筆者によれば、一人住まいで誰に知られることなく亡くなった方でも、一人でもその死を悼んでくれる場合は孤独死とは言わないのだそうだ。 本当の孤独死とは、世の中の誰からも必要とされず、亡くなった報せを遺族であろう人に知らせても、関わりたくないと拒絶されるような人の亡くなり方で、確かに孤独以外の何ものでもない。 賃貸の部屋というのは退去時に原状回復をするものだが、そういう人の場合、身内がいたとしても親戚がいたとしても誰も関わりたくない、結果その費用は全て大家さんが負担することになる。 氏が引き受けて来た仕事には、一人暮らしの孤独死だけでなく、自殺のあと、事故死、事件死いわゆる殺人か、そういう部屋も現場検証が終わった後は、そのまま放置される。 彼の仕事で最もきついのはその腐臭との闘い。 あと、同じ自殺でもすぐに発見され、あとを汚さないように気遣いまでして亡くなった方もいれば、死後何週間も発見されないような亡くなり方をされるケースもあり、後者の場合、その腐臭だけでな身体中から出る体液が床面のみならず、何週間、何か月もともなると床下のコンクリまで浸透してしまい、階下に部屋があるような集合住宅では下の部屋の天井にその体液が染み出す。 そんな場合は下のコンクリまでを含めて修復を行って行く。 氏が行った清掃の後はそんじょそこらでは消えない臭いも全くしなくなるまで徹底するのだという。 大変な仕事だ。 誰もやりたがらないだろうが、誰かがやらなければならない仕事でもある。 この本にはそんな修復に事例が数例書かれている。 本のページの中に現場写真を交えて下さるのは親切心からかもしれないが、どうしても本文を読む際に目にせずにはいられない。 写真は巻頭か巻末に集めて下さってもよろしかったのでは? などと思ってしまいました。 今や国民の4人に1人が65歳以上の高齢者で10年後には、3人に1人が高齢者になると言われている昨今、身寄りのない方の人口も増えているのでしょう。 高江洲氏の仕事ももちろんボランティアではなくビジネスとして行っている。 と、ビジネス面からだけ見ると、まさに成長産業でもあるのだが、そんな割り切りで出来ることではない。 亡くなった方への思い、という大切な心が無ければ手掛けてはいけないしごとなのだろうと思う。 23/Dec.2018
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