読み物あれこれ(読み物エッセイです)
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日本中枢の崩壊 古賀茂明 著
なんて強い人なんだろう。 影の総理と言われるほどに上り詰めた人から、恫喝とも言える言葉を浴びせられ、大臣官房付という閑職にありながらも職を辞さずに耐え続けた。 自らが官僚でありながらも、その官僚の腐敗を指摘し続けることで上司からも同僚からも冷たい視線を送られる中、耐え続けられたその精神力の強さの源はどこからくるのだろう。 上司からは好条件の天下り先への斡旋話が来るが、自らのポリシーと異なるから、ともちろん蹴っ飛ばす。 もともとは小泉政権時代の構造改革路線上にある国家公務員制度改革の牽引役に引っ張られたまではいいのだが、小泉、安倍と続いた改革路線も麻生に至って停滞し、民主に変わって、全く骨抜きにされてしまう。 梯子を完璧に外された格好だ。 そんな中でも耐えていたのは、鳩管と続いたトンデモ政権が長続きしないだろうと踏んでのことだったのかもしれない。 だから、時の海江田経産相から辞職届を提出するように言われてもひたすら耐えた。 しかしその後の経産相を引き継いだ枝野氏からも同様の打診が来たために、さすがにこの政府に見切りをつけたと言わんばかりに退職した。 この本、その現役官僚の時に書かれた本である。 政治主導の改革と言えば、 小泉の郵政改革、中曽根の国鉄民営化、三公社の民営化が印象に強いが、最近よく耳にするのが橋本龍太郎内閣である。 現役でおられる時はあの能面のような顔からツンと話す話しぶりまでもあまり好きにはなれなかったが、あとあとの改革の大元を手繰って行くと大抵は橋本内閣に行きつく。 「社会保障構造改革」、「金融システム改革」、「経済構造改革」、「財政構造改革」、「行政改革」・・・・。 この本でも橋本内閣については触れられている。 私事ではあるが、先月マレーシアを訪れる機会を得た。 そこでまさに政治主導のお手本のようなダイナミックな施策をみることが出来た。 ジャングルの真ん中を切り開いて、ポーンと新たな最先端都市を作ろうと、いやもう作られているのだ。 その一つはサイバージャヤという先端産業の集積基地を作ろうという計画。 もう一つは、プトラジャヤという新たな首都を作ろうという計画、というよりももう実行されている。 東南アジアの国の首都はどこも年々渋滞がひどくなって来ている。 マレーシアの首都クアラルンプールはまだ他の国よりはましではあるものの、やはり渋滞はある。 この既存の首都を改修することよりもジャングルの真ん中に作った最先端都市プトラジャヤにすでに首相官邸はもとより、ほとんどの政府機関がそこへ移転。 緑豊かで道路も広いプトラジャヤには渋滞などはない。 方や日本では大阪で新たな政治主導が形成されつつある。 府知事を任期途中で辞してまでして、大阪市長選に臨んだ橋本氏。 知事の座に少しでも居座り続けたいような首長達とはハナからやる気も覚悟も全く違う。これも私事だが、私は大阪市民であり大阪府民。 だから市長、府知事双方への投票権を持っているわけだ。 私の周囲誰しもが「前市長はニュースでも読んでんのがよう似合うわ。とっとと去ってくれ」という声しか聞こえなかったのにも関わらず、結果、橋本圧勝とは言いながらも前市長に52万票もの票が集まった。 大阪市役所の関係者だけでそれだけの票は生まれない。 なんとも気持ちが悪いのは週刊誌などで異常なほどに展開された橋本氏へのネガティブキャンペーンである。 役人を敵に回すといろんなことが起きるのだろう。 だが橋本氏は大阪府で一度、戦い抜き、勝ち抜き、大赤字の大阪府を黒字優良自治体に持って来た実績がある。 古賀茂明の著した日本中枢の崩壊、くいとめるのは案外、大阪発なのかもしれない。 05/Dec.2011
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