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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Mar.2015
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海に沈んだ町 三崎亜記

三崎さんて、廃墟の作品が多い気がするなぁ。
この本、短編ばかりを集めた一冊。
その短編のいくつかには廃墟がからんでいる。

その廃墟になりゆくものの最たるものが、日本の高度成長期の人気の的だったニュータウン。
一旦「ニュータウン」と名前がついてしまうと、もはや時代に取り残されていようがいまいがいつまででも「ニュータウン」なのだ。
そのニュータウンを政府の保護政策の名のもとに動物を放し飼いにしたサファリーランドのようにして、そこに住む人たちを珍しい生態系かの如くに見物させる話。

これは廃墟ではないが、廃墟よりももっと気持ち悪い。

中に住む人にはその生態系が変わらない様に全盛期の時代のままを維持させねばならず、外の情報は一切入れず、テレビがあったとしてもそのニュータウンの全盛時代の再放送を繰り変えすだけ。
どこぞの一党独裁国家よりも恐ろしいなぁ。


決して朝を迎えることのない町を訪問する「四時八分」。
これはなかなか印象深い。

いくつかある短編の中で最もアイロニーにとんでいるのが、「橋」という話。

市役所の人間が訪れ、家の前の橋が規定の通行量を満たしていないので、もっと幅の狭い橋に作り変えるから賛同してほしい、と言う。

通行量を多くなったから大きなものに、なら賛成反対の前に言わんとすることの意は理解できる。でも、少なくなったからお粗末なものに作り変えるたって金がかかる。
それなのに素直に「うん」と言わない方がおかしい、と思わせるほどにその市役所職員の受け答えは理路整然としている。
なんだろう。このお役所説明の頑なさは。
なんなんだろうこの変な感じは。

またまた不思議な三崎ワールド。短編でも大いに発揮でした。



海に沈んだ町 三崎亜記 著


23/Mar.2015
三匹のおっさんふたたび 有川浩

これって何かに連載でもしてたのかなぁ?
書きおろしとは思えない連載物感があるなぁ。

一作目がなかなか痛快で期待を超えるものだっただけにその続編となれば、最低一作目は超えてもらわないと・・・。

チビのノリさんあたりのどんな頭脳プレイが発揮されるんだろう、とかなり期待わくわくだったのに・・。

事件と言えば、駐車場のゴミ捨てだったり、深夜の中学生のたむろだったり。
しょぼい。

三匹のおっさん達よりも寧ろその息子の世代にスポットが当たっている。
作者もあとがきでそう書いている。

ならば「三匹のおっさんふたたび」じゃなく、「三匹のおっさんの息子達」とでもしてくれりゃぁそのつもりで読んだだろうに。

とはいえ、終盤で偽三匹のおっさん達が登場するあたりは少し笑える。

剣道師範おっさんの嫁さんの若かりし頃は結構モテモテだったんだ。

てなことで、三匹のおっさんふたたびでした。


三匹のおっさんふたたび 有川浩著




19/Mar.2015
途上なやつら まさきとしか

なんともダメダメ人間の集まり。

小学校5年生の息子を放っポリ出してどっかへ消えて行く母親。
親戚の家と言われてやって来た先には、40歳を超えてまだ無職の男が一人。
70歳を超えて、ろくにお礼の一つも言えない爺さん一人。

そこはまるでシェアハウスのようなのだが、そうではなかった。
そこには誰も逆らえない人が居た。
マツコデラックスばりの体型の女性。
実に何事にもそっけないこの人に誰も口答えは出来ない。
全員、その人の家の居候だ。

大人に向かって平気で「生きてる価値が無い」と言い放つ小学生には少々げんなりさせられるが、実際にいとも容易く詐欺商法に引っかかりそうになる大人をこの小学生は助けたりしている。

この話、ストーリーはともかくもとにかくこのマツコデラックスの個性がひかる。

そっけないが結構ふところが深い。

凄い体型で到底もてそうにないのに、無茶苦茶男にもてたりする。

特に人さまにお勧めするような本でも無いが、暇つぶしには丁度手頃な本だということで紹介しておきます。


途上なやつら まさきとしか 著


16/Mar.2015
虚ろな十字架 東野圭吾

ちょっと買い物に行くその間だけ幼い娘を留守番に残し、そのちょっとの間に強盗に入られ、わずか数万円のために娘を殺害されてしまった夫婦。
我が子を殺害されたばかりというのに真っ先に疑われたのがその両親だった。警察への連絡の後真っ先に事情聴取され、妻にいたっては一日で返してもらえないほどに執拗に聴取され続けた。
娘の遺体があざだらけだったり、近所でも有名な児童虐待の家ならそうかもしれないが・・・。

二人は掴まった犯人には極刑を望むが、一審では無期。控訴してあっさりと死刑判決。

そこでぽっかりと空洞が空いたような喪失感。
結局夫婦は離婚してそれぞれの道を歩こうということに。
極刑を望んで、もしそうならなかったら、二人で焼身自殺をして抗議しよう、とまで意気込んでいたのに。望みどおりの判決となったのに。

かつて妻を強姦された上に妻と子供を殺害された男性が、犯人の死刑を望んで運動をしていたことがあったっけ。
あれも最初の判決であっさりと死刑が確定していれば、あの人はあの運動を起こすこともなく、それこそ魂の脱け殻のようになってしまっていたかもしれない。なんとか極刑を、と訴え続け、運動することこそが生きる力になっていたかもしれない。
あの人は今頃どうしているのだろう。

さて、別れた夫婦だが、今度は元妻の方が殺害されてしまう。
犯人は早々に自首して来た後に、元夫は別れた後の妻の行動を追う。
妻は離婚後、フリーライターとして活動していた。

頼まれ仕事とは別に
「死刑廃止論と言う名の暴力」というタイトルの文章をを執筆。
もうすぐ出版するというところまで書きあげていた。
その文章の主旨は、
「人を殺めた人は命で償うしかない」
「刑務所という更正施設で人は更正などしない」
というもので、自らの体験談はもちろん、被害者遺族の取材、死刑を減刑する側の弁護士への取材も試みた内容だった。

「虚ろな十字架」という本のタイトルもその亡くなった元妻の文脈の派生による。

ならば、この「虚ろな十字架」という本も一見「死刑廃止を許すまじ」が主旨の様にも受け取れるが、そこはどうなんだろう。

話の終盤で出て来る話。
若気の至りで過ちを犯してしまった人の奥さんの言葉。
この人は、その一人の命と引き換えに自分達親子二人の命を救ってくれた。
今も尚、他の数多くの命を救っている。

「人を殺めた人は命で償うしかない」のかどうなのかの判断を読者に委ねようという試みなのかもしれない。

とはいえ、救いようのない犯罪というものはあるもので、上の母子殺害事件などは死刑以外の選択肢があるとはそうそう思えない。



虚ろな十字架 東野圭吾著


09/Mar.2015
三匹のおっさん 有川浩

いまどきの還暦は若い。
仕事はもちろん。草野球も草サッカーもマラソンだって若者より元気な人がどれだけいるか。

剣道場を経営していた人が還暦を迎え、同時に最後の教え子たちもやめて行き、とうとう道場は閉鎖に。
今時の道場はどこでも同じようなことが言えるのだろうが、小学生の教え子をいくら増やそうと、中学へ入る前にやめていくのだという。
同じやるなら、クラブ活動でやった方が内申書などにいい点がもらえるのだとか。
もっと極端な地域なら、小学校も6年になる前にやめていくとか。そう、中学受験だ。

師範のおじさん、幼馴染みの飲み友達と毎日飲むだけが楽しみになってしまったが、この三人なんと自警団のようなものを立ち上げようという流れになる。
日本で自警団は一般的ではないが、海外では自警団によって治安を守らなければならない国もある。

還暦のおっさん3人に何が出来るのか?いやはやそれがとんでもない連中なのだ。
この三匹のおっさんは。
一人は剣道師範。一人は柔道家。もう一人は腕力より頭脳。そして自ら改造した超強力スタンガンをふところに持つ。

この本この三匹が大活躍する物語。
かなり悪質な痴漢の撃退。
詐欺師の撃退。
芸能人になりたい女子高生を騙して脅して弄ぶ男の撃退。
孤独な老人相手の悪質商法に対抗・・・

などなど。

それまで、ジジイ呼ばわりしていた高校生の孫息子の態度がどんどん変わって行くのが面白い。
とうとう剣道をもう一度教えてくれ、などと。
それにスタンガンオヤジのあまりに真面目で素直でかわいい娘の親とのギャップも面白い。

いやはや、やはり団塊の世代はすごいものだ。
その団塊の世代が還暦を過ぎていくんだからなぁ。

これからの還暦を甘くみるとえらい目に合いそうだ。
くわばら。くわばら。



三匹のおっさん 有川浩著


02/Mar.2015
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