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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Oct.2017
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フィッシュストーリー 伊坂幸太郎
フェイク 楡周平
顔 FACE 横山秀夫
フォルトゥナの瞳 百田 尚樹
風神秘抄 荻原規子
ふがいない僕は空を見た 窪 美澄
筆に限りなし − 城山三郎伝 加藤仁
不撓不屈(ふとうふくつ) 高杉良
舟を編む 三浦しをん
不発弾 相場英雄
フランスジュネスの反乱  山本三春
フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由 横田増生
フリーター、家を買う。  有川浩
震える牛 相場英雄
憤死 綿矢りさ
仏果を得ず 三浦しをん
武名埋り候とも 西岡まさ子
ブラックオアホワイト 浅田次郎
ブラック・スワン降臨 手嶋 龍一
ブラックボックス 篠田節子
ブルー・ゴールド 真保裕一
ブルー・セーター ジャクリーン・ノヴォグラッツ
ブルータワー 石田衣良
ブレイブ・ストーリー 宮部みゆき
文学少女と死にたがりの道化 野村美月
文学少女と飢え渇く幽霊 野村美月
文学少女と神に臨む作家 野村美月
プーチン 内政的考察 木村汎
プリンセス・トヨトミ 万城目学
ぷろぼの 楡周平
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フィッシュストーリー 伊坂幸太郎

四編の小編が収められていました。
『動物園のエンジン』、『サクリファイス』、『フィッシュストーリー』、『ポテチ』
『サクリファイス』と『ポテチ』にはあの黒澤という泥棒件探偵屋さんが登場します。

作者はよほどこの泥棒件探偵屋さんがお気に入りなのでしょう。伊坂本には黒澤キャラは必須アイテムの様です。



『サクリファイス』 はその名の通り「いけにえ」が題材。
東北地方のある山奥の集落で昔からの風習としていかにもあった様な「こもり様」という人を「いけにえ」として洞窟に閉じ込める儀式が現存する。
そのに泥棒件探偵屋さんの黒澤が今回は探偵屋さんとしてが首を突っ込んで行く、というちょっと不思議な世界。
題材としての魅力を感じます。

それにしてもこの黒澤という男、初対面のしかも自分より年上の人に向かっての口の利きかたにしてはあまりにも偉そうな口を利くのです。
相手を脅しているならともかくも質問者としてはあまりに偉そうな態度じゃないですか。
それに対して相手は不遜に思う訳でも無く結構親切に答えてくれていたりするんですよね。
まぁこれは黒澤のキャラをくずさないためには仕方が無いのかもしれませんが・・・。



『フィッシュストーリー』
二十数年前、現在、三十数年前、十年後。
全く異なる舞台での出来事が次の出来事の原因になっている。
因果応報ってやつですか。いやちょっと四字熟語の使い方が違うかもしれませんね。
因果はめぐるっていうやつですかね。
いや、どうも適当な表現が見つからない。

そもそもは三十数年前の無名のロックバンドのアルバムに収録された曲の中にある1分間の無音。

この本にも書かれているビートルズの犬にしか聞こえない周波数での無音の箇所があるアルバム、というもの。
無音の箇所と言えば、「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band(サージェントペパーズロンリーハーツクラブバンド」のアルバムに収められている「A Day In the Life」の終わりの部分ぐらいしか思い浮かばないのですが、それでも無音と言ってもほんのわずかの事だったと思います。

1曲の中の1分間の無音というのは売り出すには無理があるでしょうね。
ラジオで流すわけにも行きませんのでやはり「売れない」事を前提にしたアルバム化なのでしょう。

その消された1分間のボーカルのつぶやき。

「これは誰かに届くのかなぁ。 なぁ、誰か、聴いているのかよ・・・・」

このバンドボーカルの嘆きとも言えるつぶやきはそのままアルバムに残っていれば良かったのに・・などと思ってしまいます。

この無音が無ければそもそもこのストーリーは成り立たなくなってしまうのですが・・・

フィッシュストーリー  伊坂 幸太郎 (著)


14/May.2007
フェイク 楡周平
楡周平ですぐに思い出すのはあの朝倉恭介を主人公としたいわゆるハードボイルドもの。
単なるハードボイルドとはまた違ってこの主人公、なかなかに頭脳プレイヤーなのである。
「Cの福音」、「猛禽の宴」、「クラッシュ」、「ターゲット」・・・最終完結編まで6冊ほどだったか。
あれは読みごたえがあった。

「フェイク」では朝倉恭介の様な天才は登場しない。
主人公は就職戦線から逸脱した三流大出の男で、やっと就職出来たと思ったらそれはクラブの経営会社で銀座のクラブのボーイとして薄給で長時間の労働をさせられている。

この本での印象は銀座という街をとても第三者とは思えないぐらいに良く描写している事か。
この話に登場する銀座のママの華麗さと言ったらどうだろう。

かつての大阪北新地。銀座に負けず劣らずの一流のクラブがひしめいていた。(と思う)いつの頃からか、全てが一流だった(と思っていた)時代から今の新地をみると一流どころは相変わらずそうなのだろうが、なにかもっと小市民的なというか庶民的なレベルの店が増えたような気がする。
ここで働く女性は客あしらいと言う意味ではプロ中のプロだったと思ったのはそう思った頃が単に若かっただけなのだろうか。
なんか普通のコと言ったら失礼になるだろうが、大学生か専門学校のバイトが居たりする。
経済新聞を欠かさず読んで、客の話題のツボを押さえるなんてとんでもなく、席に付かれたらこちらが疲れてしまう様な、客に気を遣わせないどころか、客の方がわざわざ気を遣わなければならない。そんな店など今ではもう当たり前なのか。

昔、学生時代に意味も無く大阪の中之島図書館へ通っていたのは、当然新地飲みに行く身分でもない自分が、図書館からの帰り道で新地へ向かう夜の蝶とすれ違う、その瞬間の為だけでは無かったか・・・。
あの頃の北新地なら充分銀座に匹敵していたのではないだろうか。

学生時代に新地でバイトをしていた友人の話を聞くだけでも、往年の新地のママには豪快な話はいくつも出て来る。
「車の免許を取りに行く事にしたの」
と、まだ教習所の申込書をもらって来ただけで、頭の中はもう車を運転出来る気分になって、教習所へ行く前に早速、外車を購入したとか。
で、結局教習所へは一回行ったっきりもうそのままだったり。

この本に登場する若き美貌の麻耶というママも自分では運転をしないがベンツを持っている。
送り迎えの時以外は自由に使っていいと言われた主人公はそれだけでもう有頂天。

ここではいくつものフェイクが登場する。
一本10万もするワインが原価3万のものから三千円のものに代わっていたところでそれに気が付く客など一人も居ない。

この「フェイク」の痛快さは、やはり金銭授受、というやり方の巧妙さ、というよりも面白さ、と言った方がいいだろうか。
誘拐事件にしたって恐喝事件にしたって、一番リスクが高いのが金銭授受の時だろう。
それを直接授受せずして金を手にする。

内容の一部は、かつてあったあのグリコ・森永事件を思い出させてくれる。
あの事件についてはいろんな説が飛び交ったが、犯人グループが金銭の授受の方法を何度も指示しながら、表面上では受け取りに失敗している。
もちろん裏ではしっかりと授受があったというのが大方の見かたであったかとは思うが。
またまた諸説ある如く、金銭授受そのものはフェイクで、実は株の売り抜けでボロ儲けしたとかなんとか。
あんまり書いてしまうとこの「フェイク」のネタバレになってしまうので書けないが、この本、そういう痛快さを持っている本なのである。
主人公の友達の趣味が競輪だった、という所がミソである。

フェイク  楡 周平 (著)


16/Mar.2007
顔 FACE 横山秀夫

こういう視点からの刑事もの捜査ものの話はちょっとめずらしいかもしれません。
婦警の視点からの警察の署内とはいかなるものなのか。
婦警という言葉、実は例の男女雇用均等法以降、女性警察官に改まったと思いますが、小説内にては婦警という呼称を使用していますので、その呼称に倣います。

以前は駐車違反の取締りなどで、良く見かけた婦警さんですが、最近は民間のオジさん達にとってかわられてからというもの、とんと見かけなくなってしまいました。

以前は良く駐車している車の所にミニパトでやって来て、違法駐車車のタイヤの横でチョークを持っている姿を見かけたものです。
取り締まりとなると、なんとも冗談も通じない、固い顔をしてひたすら業務に専念する。話す言葉もお定まりの決められた言葉しか発しない、まるでロボットのようなイメージを持った頃さえあります。
それは婦人警官だから、嘗められてはいけない、という気持ちからなのでしょうか。
それともそれだけ若い人だったというだけかもしれませんね。
いずれにしても与えられた職務に忠実だった、ということには違いない。
どこぞの国の警官みたいに袖の下なんて絶対にありえない。
そんな清廉潔白な人達とだというのに・・。

それでも署内ではこんな理不尽な扱いを受けていたのでしょうか。

「ったくだから女は使えねぇ」とか、異動先の上司からは「婦警なんぞ廻されたら一人減と一緒じゃねぇか」などと酷い言葉を日々浴びせられる。


主人公は犯人の似顔絵描きを専門とする婦警さん。
だからタイトルも顔 FACEなのでしょう。
書いた似顔絵で犯人が迅速に捕まったので、警察の広報活動の一貫で記者会見を開く事になるのですが、実際に捕まった犯人とその似顔絵は似ても似つかない。
その似顔絵は「お手柄。婦警さん」の新聞見出しとともに掲載されるはずのもの。
上司は彼女に犯人の写真を渡し、似顔絵の書き直しを命じる。

それって改ざんではないか。似顔絵改ざんを彼女は拒もうとするが組織のため、上司のため泣く泣く改ざんをしてしまう。

良心の呵責に耐えかねて、無断欠勤の上、失踪、そして半年間休職。

そんな繊細な人には警官などという仕事は向いていないのかもしれませんが、ところがそんな繊細な主人公は似顔絵描きで培われた注意力、観察眼には人一倍の能力を持っているのです。

なんだかんだと罵声を浴びせられながらも結構、難事件の解決の糸口を発見したり、と活躍するのです。

世の中、犯罪の総数は以前より少なくなったかわりに、凶悪な犯罪やわけのわからない犯罪が多くなって来ています。

こんなご時世だからこそ、頑張れ婦警さん。と主人公のような婦警さんを応援したくなります。

顔 FACE  横山秀夫著


05/Aug.2008
フォルトゥナの瞳 百田 尚樹

死の迫った人の身体が透明になって見えてしまう。
そんな能力が突如身についてしまった青年の話。

だんだんと見慣れて行くと、その透明度に応じておおよその死期までわかるようになる。元気そのものの若者で全く透明状態なら病死ではなく事故死だろう、とかおおよその想像がつく様になって来る。

もっとも、全く透明なら顔面が青白くて今にも死にそうな顔をしててもわからないんじゃない?などと瞬間思ってしまうが、やぼな突っ込みというものだろう。
運命は変えられないか?と青年は自問しながらも直後に事故死をするなら、話しかけたりすることで、一瞬、次の行動を遅らせたりすることで事故を免れるんじゃないか、とチャレンジしたりする。

ある時、そんな能力を持った人間が自分だけで無い事がある時、判明する。
その能力をもう何十年も持ったまま、何も行動をせずに知らん顔を決め込むのだという。
なんでも、その能力を使って人の運命を変え、本来なら死んでいるはずの人を救ってしまうと、その分自分の寿命が短くなってしまうのだという。

ならば、こんな能力など無ければ良かったのに・・・と自問する青年。

この物語の青年はどこかしら「永遠の0」の宮部少尉に通じるものがある。
未来のある幼い子供達が死んでいく、それがわかっていながら何もせずにいられるのか・・・。


百田さんはストーリーテラーとして、素晴らしい才能を持っておられる方。

「殉愛」をめぐってのトラブルがまだ続いているのだろうか。

一時は良くメディアにも登場されたのが、このところパッタリと登場されなくなってしまった。
メディアへの登場はどうでもいいのだが、せっかくの才能。
このまま埋もれさせていいわけがない。

もっともっと百田ワールドを見せて欲しいと願うばかりだ。



フォルトゥナの瞳 百田尚樹 著


01/Jun.2015
風神秘抄 荻原規子

『空色勾玉』『白鳥異伝』『薄紅天女』の勾玉三部作は日本の神話時代から最後は平安時代の初期までを舞台にしているが、この『風神秘抄』はそれに続ける様に平安時代末期、保元・平治の乱の時代を舞台としている。
作者は日本の歴史をどんどん下って行くりもりなのであろうか。

風神秘抄と聞くと梁塵秘抄を頭に思い浮かべる人は多いのではないだろうか。
まんざら関係ないわけではない。というよりも大いに関係がある。
梁塵秘抄は後白河法皇が編纂した今様の歌謡集。この風神秘抄の中でもこの後白河院の存在は大きいし、今様の舞いと唄と笛の音が物語の中枢に位置する。

この本は前勾玉三部作と直接の繋がりがある訳では無い。
だが、通常の人間には持てない特殊な能力を持つ人物が登場する、という意味では似ている。
また勾玉三部作も『風神秘抄』も全て、過去の歴史を舞台とし、日本史の中枢を舞台にしているという意味で舞台としては壮大であるが、全て恋愛小説でもあるファンタジーである。
それまでの三部作では必ず勝ち気な恋愛などには全く興味のない様な女の子が登場し、彼女が冒険し、最後には恋愛ものとして成立するのが、この本では前作よりかなりひたむきなのである。

今回は平治の乱で平氏に負けて敗走する源氏の一兵卒である草十郎が主人公。
草十郎は一人で人前では吹かないが、野山で笛を吹く。
すると鳥や獣たちが集って来るのだ。
最初は犬笛の様な犬には聞こえるが、人の耳には聞こえない非可聴周波数を利用した様なものを想像したが、荻原規子氏が書くものにそんなものが使われるわけがない。

草十郎も持つ笛が特殊なのでは無く、草十郎そのものが特殊なのである。
草十郎が笛を吹く事で特殊な力を発揮し、白拍子の糸世は舞う事で特殊な力を発揮する。ひたむきなのは、この話の中盤以降全て、異世界(この異世界というのがどう考えても現代であるところが面白い)へ行った糸世を連れ戻すための努力に注ぎ込まれるからである。

保元の乱は崇徳上皇対後白河天皇の争い。上皇方に源為義(義朝の父)、頼賢(義朝の弟)為朝(義朝の弟)・・・。天皇方には、源義朝、平清盛が付き、源氏にとっては親子、兄弟の戦さ。
保元の乱で力を弱められた源氏は平治の乱で平氏に敗北する。
源氏の棟梁である義朝は尾張まで落ち延びるが、家来であったはずの男に首を取られてしまう。
草十郎の慕う悪源太義平は義朝の悲報を聞くや、わずかの手勢で京へ撃って出て敗北。
六条河原の獄門に首をさらされる。

これより以後「平家にあらずんば人にあらず」という時代へと突入するわけだが、その
中心の平清盛をも操っていたと言われるのが後白河院である。

後白河院は保元の乱、平治の乱でも中心的存在だったが、その後頼朝が挙兵した後も、また義経を頼朝から切り離す事を画策したのも後白河院ではないか、と言われるほど、長期に渡って陰謀をめぐらせた人物である。

糸世の舞いと草十郎の笛が頼朝を打ち首から救っただけでも「奢る平家は久しからず」という言葉を無くしてしまうほどに歴史を大きく変えてしまった事になるのだが、後白河院の寿命を延命させてしまったとなると二人は更に大きく変えてしまったわけだ。

薄紅天女で活躍する藤太や阿高は武蔵国の足立郡郡司の長の息子達だった。
草十郎も武蔵の国の武者で正式な名前は「足立十郎遠光」。
という事は草十郎は藤太や阿高達の子孫だった?

何気なく藤原仲成以後25代に亘って死罪は無かったという記述の藤原仲成もまた、薄紅天女で薬子が男装した時に使った呼称(実史では薬子の兄であるが)。

空色勾玉の鳥彦の子孫にあたるの鳥彦王という鳥の王の存在はこの物語にとっては大きい。

『風神秘抄』はこれまでの作品との直接の繋がりは何も無いけれど、作者はそうやって何気なくこれまでの読者へのファンサービスを行っている。

風神秘抄  荻原規子 著


08/Oct.2007
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