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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
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匂いの人類学 エイヴリー ギルバート
日露エネルギー同盟 藤 和彦
日本人はいつ日本が好きになったのか 竹田恒泰
日本中枢の崩壊 古賀茂明
日本中枢の崩壊 古賀茂明
日本の女帝の物語 橋本 治
人魚の眠る家 東野圭吾
人間の土地 サン=テグジュペリ
人間の覚悟 五木寛之
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匂いの人類学 エイヴリー ギルバート

人間は何種類の匂いを嗅ぎ分けられるか。
3万種類を嗅ぎ分けられると言うジャーナリストも居れば、1万種類としたプレス・リリースも有った。
しかし、それはどれも根拠の無い意味の無い数字だった。
「なんてこった」と筆者は嘆くのだった。

この人、自身では調香師のように臭いをかぎ分けられるわけではないのだが、まぎれもなく、「匂い」の専門家だろう。

これだけいろいろな切り口から「匂い」というものを切り刻んだ本があるだろうか。

いったい匂いというのはどれだけの種類があるのか。
それを専門にする人達はソフトウェアのサブモジュールよろしく、上位からのカテゴリ分けの下の下位モジュールが幾層にも連なる方式で匂いを管理する。

そのカテゴリも時代やその専門とする業種によりさまざま。

そうして匂いというものを分析する人達がいるかと思えば、驚くべき実験結果が記述されている。

瓶の中の液体を綿の塊に沁み込ませて学生たちに嗅がせたのだという。
何か匂いがしたら手を上げるように指示すると3/4の学生が手をあげた。
だが、実際にその瓶の中の液体は全くの無臭の水なのだった。

匂いというものが、方や奥が深いものであるにも関わらず、人が感知する匂いはかなり心理的な要素に左右される。

別の実験では、ラジオで超高周波の音を流し、心地よい田舎の香りが流れる音だと説明すると、多くのリスナーが干し草の匂いがした、牧草の匂いがした・・・などと感想を報告して来たという。
もちろんラジオから匂いなど流れてはいない。

いかに「匂いがする」と思うことが直ちに匂いを感じることに繋がるのかを示した貴重な実験結果だ。

そのほかにも、マリファナの匂いのする印刷を頼まれた業者の話。
マリファナの匂いやコカインの匂いを作ることは果たして合法なのか。

料理と匂いの関係についての分析。
匂いがあるからこそ、風味というものが生まれる。
無臭のコーヒーなど誰が飲みたいと思うだろうか。

また「匂い」をマーケティングに利用しようという試み。

ありとあらゆる角度から「匂い」というものを分析している。

匂いについてだけで全12章。

なかなかにして値打ちのある本だと思う。



匂いの人類学 鼻は知っている エイヴリー ギルバート (著)  勅使河原 まゆみ (翻訳)匂いの人類学 鼻は知っている エイヴリー・ギルバート著 勅使河原まゆみ 翻訳


07/Mar.2012
日露エネルギー同盟 藤 和彦

今年(2013年)の1月に出版された本。
安倍首相が誕生して一ヶ月経つか経たないかの時期に出版され、その後の安倍政権の指南本にでもなったのではないか、とすら思えるほどに事実がその後をなぞっている。

タイトルこそ、日露エネルギー同盟だが、本書の大半はアメリカ、欧州、中国のそれぞれの危機、今後の心配事にページが割かれている。

アメリカでのシェールガス革命以降、もはやアメリカは中東の石油に依存する必要がなくなる。
となれば、アメリカは中東から徐々に距離を置き始めるのではないか。
ならばアジアに軸足を移すかと思いきや、アジアからも手を引き、アメリカは世界の警察であることをやめてしまうのではないか。
アメリカはかつてのモンロー主義ならぬ新モンロー主義に走るのではないか。

中国は成長が鈍化し、急成長で維持していた国内の不満を対外に向けるためにも、南シナ海、東シナ海での緊張状態をもっと高めるのであろう。
今後は、もはや戦争も辞さずの構えで来るだろうから、一触即発の危機は常にある。
アメリカのことも中国のことも複数の著名な方、著名な新聞の記事なども引用しながら説明されている。

このあたりのことについてとなると、以前、中国については誰よりも詳しいと言われる石平氏にお話を伺ったことがある。
石平さん曰く、尖閣周辺の緊張は今後何年も何年も続くでしょう。
中国は一触即発のギリギリのところまで、意図的にやってくるでしょう、
習近平は軍に対しても国内メディアに対しても強気の発言を続けるでしょう。
でも、一線を超えることは決してしませんよ。
そこでしくじったら習近平の立場がなくなるどころか、共産党一党支配の体制そのものも崩壊してしまうでしょうから。

と、緊張は続いても戦争にはしない、というご意見だった。

いずれにしろ、アメリカが中東から完全に引くとなると、ホルムズ海峡を通る原油に依存する日本に心配事が増える。

中東各国も石油の国内消費が増えつつあり、輸出一辺倒ではなくなってくる。

中国の覇権主義に対抗するための防波堤としてもその周辺国と緊密な関係を築く必要がある。

その中でも最も重要ななのはロシアだ、と。

そして、石油からガスへとエネルギー源が変わっていくのは、もはや世の趨勢である、と。
日本は樺太から北海道を経由して日本国中に建設された高速道路網を使ってパイプラインを建設すべきだ、と。
筆者の提言は続く。

安倍政権は発足直後に自ら東南アジアを歴訪し、GW期間中主要閣僚は東南アジア、自らはロシアへ赴き、プーチン大統領と会談。
2プラス2の立ち上げまで話を展開させてきた。

ロシアも実は中国との間でウラジオストックを巡って領土問題を抱えているのだ。

なんだか、ここまで符合してくると、この著者、ひょっとして安倍政権のブレーンにでも入ったのではないか、とさえ思えてくる。

もともと経産省から内閣官房へ出向した経歴を持つ人だ。
あながち有り得ない話ではないかもしれない。

日露エネルギー同盟 藤 和彦 著


17/May.2013
日本人はいつ日本が好きになったのか 竹田恒泰

「あなたは自国が攻められようとしている時に自らが戦おうとしますか?」
という問いかけに対して「Yes」と答えた人の比率が世界で最も低い国が日本なのだという。
「あなたは自国に対して誇りを持っていますか?」
の問いかけに対して「Yes」の低さも驚くべくものだったという。

それが、ここ最近の調査ではわずかながらもパーセンテージが上がっている。
震災後の整然と礼儀正しい被災者たちを見て世界が驚き、その世界が驚いたことに日本人が驚く。
尖閣の問題も自国を愛する気持ちを高めた要素、と筆者はみている。

だから、タイトルは「日本人はいつ日本が嫌いになったのか」ではなく「好きになったのか」なのだ。

この本に書かれていることの大半は、さほど目新しいものではない。
主旨は目新しくなくても表現方法が目新しい。

前段の日本人がどのようにして骨抜きにされて来たのか。
GHQのやって来た骨抜き作戦をカエルを時間をかけて徐々にボイルする「ゆでガエル」に例えるなど竹田氏ならではではないだろうか。

この前段あたりは、かなりわかりやすく書かれているので、義務教育の日本史(この日本史という言い方も氏の言葉を借りれば国史でなければおかしいのだという。確かに言われてみればそうだ)の教科書の先頭にでも持って来てこの昭和の戦後日本の成り立ちを学んでもらうには丁度いいかもしれない。
昭和の戦後から遡って過去の歴史を学べばいい。

日本国憲法の成り立ちのあたりの記述は簡略化されすぎているかな。半藤一利の「昭和史〈戦後篇〉」が、より詳しい。

中段の韓国についての意見は「やっぱりなぁ」という感じの竹田氏ならではのいつもの持論だ。

後段に書かれた古代カルタゴの例は興味深い。

ローマ帝国に敗れたカルタゴは軍隊を持たない事を約束させられ、その後経済重視の政策で急速な経済発展を遂げるが、経済以外の知的な倫理的な進歩を目指そうと何の努力もしなかった。
そのカルタゴの姿が戦後の日本とそっくり、ということ。

そしてそのカルタゴはローマ帝国に滅ぼされてしまう。
ローマ帝国はカルタゴに土地に塩を撒き、二度と作物が育たない土地にしてしまうのだ。

ここらあたりは是非とも副読本の中にでも入れておいてほしいものだ。


日本人はいつ日本が好きになったのか 竹田恒泰 著


09/May.2014
日本中枢の崩壊 古賀茂明

なんて強い人なんだろう。

影の総理と言われるほどに上り詰めた人から、恫喝とも言える言葉を浴びせられ、大臣官房付という閑職にありながらも職を辞さずに耐え続けた。

自らが官僚でありながらも、その官僚の腐敗を指摘し続けることで上司からも同僚からも冷たい視線を送られる中、耐え続けられたその精神力の強さの源はどこからくるのだろう。
上司からは好条件の天下り先への斡旋話が来るが、自らのポリシーと異なるから、ともちろん蹴っ飛ばす。

もともとは小泉政権時代の構造改革路線上にある国家公務員制度改革の牽引役に引っ張られたまではいいのだが、小泉、安倍と続いた改革路線も麻生に至って停滞し、民主に変わって、全く骨抜きにされてしまう。
梯子を完璧に外された格好だ。

そんな中でも耐えていたのは、鳩管と続いたトンデモ政権が長続きしないだろうと踏んでのことだったのかもしれない。

だから、時の海江田経産相から辞職届を提出するように言われてもひたすら耐えた。
しかしその後の経産相を引き継いだ枝野氏からも同様の打診が来たために、さすがにこの政府に見切りをつけたと言わんばかりに退職した。

この本、その現役官僚の時に書かれた本である。

政治主導の改革と言えば、
小泉の郵政改革、中曽根の国鉄民営化、三公社の民営化が印象に強いが、最近よく耳にするのが橋本龍太郎内閣である。
現役でおられる時はあの能面のような顔からツンと話す話しぶりまでもあまり好きにはなれなかったが、あとあとの改革の大元を手繰って行くと大抵は橋本内閣に行きつく。
「社会保障構造改革」、「金融システム改革」、「経済構造改革」、「財政構造改革」、「行政改革」・・・・。
この本でも橋本内閣については触れられている。


私事ではあるが、先月マレーシアを訪れる機会を得た。
そこでまさに政治主導のお手本のようなダイナミックな施策をみることが出来た。
ジャングルの真ん中を切り開いて、ポーンと新たな最先端都市を作ろうと、いやもう作られているのだ。
その一つはサイバージャヤという先端産業の集積基地を作ろうという計画。
もう一つは、プトラジャヤという新たな首都を作ろうという計画、というよりももう実行されている。
東南アジアの国の首都はどこも年々渋滞がひどくなって来ている。
マレーシアの首都クアラルンプールはまだ他の国よりはましではあるものの、やはり渋滞はある。
この既存の首都を改修することよりもジャングルの真ん中に作った最先端都市プトラジャヤにすでに首相官邸はもとより、ほとんどの政府機関がそこへ移転。
緑豊かで道路も広いプトラジャヤには渋滞などはない。


方や日本では大阪で新たな政治主導が形成されつつある。
府知事を任期途中で辞してまでして、大阪市長選に臨んだ橋本氏。

知事の座に少しでも居座り続けたいような首長達とはハナからやる気も覚悟も全く違う。これも私事だが、私は大阪市民であり大阪府民。
だから市長、府知事双方への投票権を持っているわけだ。
私の周囲誰しもが「前市長はニュースでも読んでんのがよう似合うわ。とっとと去ってくれ」という声しか聞こえなかったのにも関わらず、結果、橋本圧勝とは言いながらも前市長に52万票もの票が集まった。
大阪市役所の関係者だけでそれだけの票は生まれない。
なんとも気持ちが悪いのは週刊誌などで異常なほどに展開された橋本氏へのネガティブキャンペーンである。

役人を敵に回すといろんなことが起きるのだろう。
だが橋本氏は大阪府で一度、戦い抜き、勝ち抜き、大赤字の大阪府を黒字優良自治体に持って来た実績がある。

古賀茂明の著した日本中枢の崩壊、くいとめるのは案外、大阪発なのかもしれない。


日本中枢の崩壊  古賀茂明 著


05/Dec.2011
日本の女帝の物語 橋本 治

この本の副題は「あまりにも現代的な古代の六人の女帝達」とあります。
日本における女性天皇のイメージは、中継ぎ的なイメージがあるのですが、この本で描かれる古代の6人の女帝達の中には「あまりにも現代的」かどうかはさておき、圧倒的な権力を持って国を統治した女帝、後の代数代に渡るまで影響力を残した女帝などが紹介されています。

それにしても系図というものは、こんなに面白いものだったのでしょうか。
まさに目から鱗でした。

ただ、話の流れに沿って、系図1、系図2・・・と文章の合い間に出て来るのは著者の親切心からでしょいうが、いかんせん登場人物があまりにも多すぎるのです。
その都度、その登場人物が登場する系図を探し回らければならないのは少々不便な構成でした。
出来れば巻頭に集めておいて頂いた方が探しやすかったと思います。

さて肝心の女帝達です。
厩戸皇子=聖徳太子という立派な皇位継承の位置にある成人男子であっても譲位をしなかった推古天皇。

弟の孝徳天皇に一旦は譲位をした皇極天皇。
孝徳天皇の後に再度斉明天皇として返り咲き、自ら軍を率いて九州まで戦いにむかった。

壬申の乱にて大友皇子を破って天皇になった天武天皇の后である持統天皇。
息子である草壁皇子が居ながらにして自らが即位。
夫から妻への様でありながら天智天皇の位置から系図をみると弟から娘へ、となっているのです。
ということはこの夫婦関係は叔父と姪の間柄。
こんなのは系図を見ているとざらです。
如何にこの時代の天皇家が天皇家の血筋同士で濃いものだったことか。

また、系図を眺めていると、天皇家が一旦有力な豪族などとの間で濃い間柄になったとしても、それは一時的なことで、その先の系図ではまた、その豪族とは遠い血筋の天皇へと引き継がれる、という補正が効いている点に驚きます。
古くは大和葛城地方の豪族葛城氏しかり。
聖武天皇に至っては、母親が藤原不比等の娘でその后もまた藤原不比等の娘。
そしてなんということか。男子では無く、その娘を皇太子とし、孝謙天皇として即位させてしまいます。
藤原不比等の血がどれだけ濃いことか。
独身の時から次代の天皇を約されてしまった孝謙天皇は結局独身を貫いて、その先はまた天智天皇の孫にあたる光仁天皇に引き継がれて行く。
常に一旦他の血が濃くなっても、また元の濃い天皇家の血筋へと補正されて行くのが系図というものから見えて来ます。

系図だけ見ると不思議な譲位のされ方が出て来ます。
息子から母へ母から娘へ。
文武天皇に次はその母である元明天皇へ、元明天皇からはその娘である元正天皇へ。

何故、そんなことが起こったのか、それは本文の中で分かり易く説明されています。

はたまた、皇統が絶えそうになったこともあります。
武烈天皇の後、男系が絶えそうになりますが、その次をみると系図ははるか遠くにあった継体天皇へ。
継体天皇の曾祖父のさらに祖父が応神天皇と五代も遡らなければ天皇が出て来ないほど、一旦は本流からは遠いところにあった天皇なのですが、たちまちにして皇女を后にその二人の息子も皇女を后に、と濃い血筋に固められて行きます。

この本、飛鳥から奈良時代の一端を知るにはとても良い本だと思います。

長屋王の変にしたって、橘奈良麻呂の乱にしたって、恵美押勝の乱にしたって高校の歴史の教科書では触れられるのはほんの一行か二行でしょう。

この本ではそれらも丁寧に解説してくれています。
それらの騒乱の大元に女性天皇の存在がどれだけ影響を及ぼしたのかも良くわかります。

さて、あらためて現代。
少し前にあった皇位継承問題の論議は悠仁親王の御生誕にて完璧に未来の世代へ先送りされています。

目の前に危機が来ない限り、須らく次世代へ先延ばしをしようとするのはこの時代の政治家の性癖と言っても過言ではないのでしょうが、この先送りは禍根を残すことになりかねないのでは?と危惧します。
皇位継承問題の議論は今でしか出来ないものだと思うのですがいかがでしょうか。


日本の女帝の物語―あまりにも現代的な古代の六人の女帝達 (集英社新書 ) 推古天皇、皇極天皇=斉明天皇、持統天皇、元明天皇、元正天皇、孝謙天皇=称徳天皇


08/Nov.2011
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