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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
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殺人者たちの午後 トニー・パーカー

死刑制度の無いイギリスでは、終身刑は最も重たい罪だが、その終身刑すらも無くなろうとしているのが現状。

この本に登場するのは、10人の終身刑の宣告を受けた人たち。
著者が実在の彼らをインタビューしていくノンフィクション。

殺人者たちへのインタビューというから、どれだけすさまじいものかと思いきや、
ごくごく普通の人と普通に会話している。

どの人も殺人を犯す瞬間だけ、何かスイッチが入ってしまったかの如くだ。

殺人者とはいえ、当たり前だが、十人十色、人生を悲観している人もいれば、ものすごい楽観主義の人も居る。
目が合ったヤツとは必ず喧嘩をしてきた男も、何度目かの刑務所で老囚からさとされ、勉学に励み始める。
ロンドンマラソンに出る、と毎日塀の中でランニングし続ける人もいる。

肝心の殺人を語る箇所だが、長年の恨みつらみの結果、犯行に至ったなどというのは一つもない。
結構、その場の成り行きの延長で、計画性もあまりない。
酔っている勢い、もしくは酔っぱらっていて覚えていない、というのも。

まだ獄中の人も居たが、大半は仮釈放と言う形で、保護観察官への定期的な報告をするだけで外の世界で暮らしている。

但し、やはり終身の刑であることには違いない。

20年前にまだ赤子だった自分の息子を殺してしまった男は言う。

「世界中の人間が自分を許しても自分は自分を許せない」と。



殺人者たちの午後 トニー・パーカー著


14/Sep.2016
墜ちてゆく男 ドン・デリーロ

出だしの描写が凄まじい。
あの貿易センタービルが倒壊していく映像は未だに記憶に新しい。
まさしくその9.11の現場に立ち会った人でなければ表せない様な描写が続く。

貿易センタービルから脱出したビジネスマンが目的も行き先もわからないまま、ブリーフケースを片手に歩く姿から話は始まる。

この本は読んでいて決して楽しい本ではない。
ストーリー性がほとんどないのだから。
ノンフィクションではないが、限りなくノンフィクションを再現しようとしたフィクションと言うべきか。

9.11事件に関してはあまりにもまだ生々しすぎて、脚色付けなど出来ないのかもしれないし、ドン・デリーロという作家がそういうもの書きなのかもしれない。

ストーリー性がほとんどないということは、一旦読みづらいと思った人にはとことん読みづらいかもしれない。
また、シチュエーションが変る毎に語り手が変るというのは良くあるパターンだが、いつの間にかシチュエーションが変っていて、そこでの彼、彼女はいったい誰のことなんだ?なんてことがしょっちゅう。
これも作者が因なのか、訳者に因があるのか、はたまた読み手が読解力を駆使していないことが因なのか。

9.11は映像を見た世界中の人に衝撃を与えたが、中でもアメリカ人にとっては、衝撃などという言葉では表しきれない出来事だっただろう。
真珠湾どころじゃない。本土の中枢部が攻撃されたのだから。
まさにこれは戦争だ、と当時のプレジデントの発言を待つまでも無く、そう思った国民は大勢居たのかもしれない。

片や、この本ではテロの実行犯をも登場させ、彼らの行動と命をかけて突き進む気持ちを描こうとしている。

この9.11の前からも散発的にアメリカ人を狙ったテロは頻繁に発生していた。

また、アメリカは宣戦布告をするわけでもなく意味も無くアフガンへの空爆などを頻繁に行っていた。

かつて、中東で仕事をしていた友人が言っていた。
アメリカ人には何故自分達が嫌われているのか、という事はおそらく一生わからないだろう、と。

この作者はその気持ちをわかろうとした唯一の人なのかもしれない。



丁度、本日6/5配信のニュースにてオバマ大統領がスラム世界に向けて演説を行い、イスラム世界との関係を新たな始まりに導く意向を示したが、果たしてどうなのだろう。
まだ、アフガンへの増兵などと言っているうちは、私の中東の友人に言わせれば、やっぱりアイツもわかってないヤツ、の一人にカウントされるのかもしれない。

墜ちてゆく男  ドン デリーロ (著) Don DeLillo (原著) 上岡 伸雄 (翻訳)(新潮社)


05/Jun.2009
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