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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Sep.2018
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ハッピー・リタイヤメント  浅田次郎
廃墟建築士 三崎亜記
ハイブリッドカーは本当にエコなのか?   両角岳彦
半島を出よ 村上龍
博士の愛した数式 小川洋子
白鳥異伝 荻原規子
はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか 篠田節子
ハケンアニメ! 辻村深月
驟(はし)り雨  藤沢周平
果てしなき追跡 逢坂 剛
花の鎖/境遇 湊かなえ
ハリー・ポッターと死の秘宝 J.K.ローリング
ハリー・ポッターと謎のプリンス J.K.ローリング
春告げ坂 安住洋子
ハッピーバースデー命かがやく瞬間 青木和雄
ハードル 真実と勇気の間で 青木和雄
阪急電車 有川浩
犯罪小説家 雫井脩介
犯人に告ぐ  雫井脩介
バージェス家の出来事 エリザベス ストラウト
バーティミアス プトレマイオスの門 ジョナサン・ストラウド
売国 真山 仁
バイバイ、ブラックバード 伊坂幸太郎
幕末史 半藤一利
ばくりや 乾ルカ
化物語 西尾 維新
バターサンドの夜  河合二湖
薔薇盗人 浅田次郎
晩夏のプレイボール あさのあつこ
盤上のアルファ 塩田武士
ばんば憑き 宮部みゆき
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氷点 三浦綾子
ヒア・カムズ・ザ・サン 有川浩
東のエデン 神山健治
悲惨伝 西尾 維新
密やかな結晶 小川洋子
ひそやかな花園 角田光代
7月24日通り 吉田 修一
悲痛伝 西尾 維新
羊と鋼の森 宮下奈都
光秀曜変 岩井三四二
人質の朗読会 小川洋子
ひとり日和 青山七恵
火花 又吉直樹
悲報伝 西尾 維新
肥満と飢餓 ラジ・パテル
日御子 帚木蓬生(ははきぎほうせい)
秘密 東野圭吾
悲鳴伝 西尾 維新
姫椿 浅田次郎
ひりつく夜の音 小野寺史宜
昼が夜に負うもの ヤスミナ・カドラ
貧者を喰らう国  中国格差社会からの警告 阿古智子
美少年探偵団 西尾 維新
ビタミンF 重松清
ビヨンド・エジソン 最相葉月
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フィッシュストーリー 伊坂幸太郎
フェイク 楡周平
顔 FACE 横山秀夫
フォルトゥナの瞳 百田 尚樹
風神秘抄 荻原規子
ふがいない僕は空を見た 窪 美澄
筆に限りなし − 城山三郎伝 加藤仁
不撓不屈(ふとうふくつ) 高杉良
舟を編む 三浦しをん
不発弾 相場英雄
フランスジュネスの反乱  山本三春
フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由 横田増生
フリーター、家を買う。  有川浩
震える牛 相場英雄
憤死 綿矢りさ
仏果を得ず 三浦しをん
武名埋り候とも 西岡まさ子
ブラックオアホワイト 浅田次郎
ブラック・スワン降臨 手嶋 龍一
ブラックボックス 篠田節子
ブルー・ゴールド 真保裕一
ブルー・セーター ジャクリーン・ノヴォグラッツ
ブルータワー 石田衣良
ブレイブ・ストーリー 宮部みゆき
文学少女と死にたがりの道化 野村美月
文学少女と飢え渇く幽霊 野村美月
文学少女と神に臨む作家 野村美月
プーチン 内政的考察 木村汎
プリンセス・トヨトミ 万城目学
ぷろぼの 楡周平
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兵士たちの肉体 パオロ・ジョルダーノ
変な国・日本の禁煙原理主義 山崎正和/養老孟司
ペテロの葬列 宮部みゆき
ペンギン・ハイウェイ 森見登美彦
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ホームレス中学生 田村裕
放射線のひみつ 中川恵一
北天蒼星 伊東潤
星月夜 伊集院 静
星やどりの声 朝井リョウ
蛍坂 吉村 達也
本屋さんのダイアナ 柚木 麻子
ボックス! 百田 尚樹
ぼくらのひみつ  藤谷 治
ポトスライムの舟 津村記久子
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リアル鬼ごっこ 山田悠介

時は30世紀。
日本は王国になっている、時の王様は150代目

日本の皇室でさえ20世紀、いや15世紀ほどか、その間に125代。
ということはこの21世紀からみての日本の未来が設定というわけでもなさそうだ。

主人公の佐藤翼は中学・高校・大学と陸上部に所属し、短距離の実力は高校時代ではインターハイのトップクラス。
中学、高校、大学という学校制度、インターハイという大会の存在、全く現在日本と同じ。
翼の家庭は翼の幼い頃に父親のDVで母親は妹を連れて出て行ってしまう。
これも日本のどこかに転がっていそうな話。

父親の職業について翼は関心が無かったが、実は大手企業に勤めていたという。
大手企業という存在があるという事は資本主義社会なのだろう。

翼の住む横浜といい、新幹線という乗り物といい、新大阪から淀川区の新北野へ移動するあたりといい、現代日本との違いは見当たらない。

その現在の日本を舞台にしながら王様がいる。
しかも独裁政権。
カリスマ性ゼロ。
誰の口からも馬鹿王様としか言われない。
その馬鹿王の苗字が「佐藤」なのだという。
その30世紀の世界の日本の人口は約1億人。
その内、佐藤姓の人口が500万人。
この王様、自分と同じ佐藤姓の存在が気に入らないので、抹殺したいと言い出す。

他の佐藤姓が気に入らないのなら、佐藤の人偏を取って左藤にでも皆の姓を変えてもらったらどうなんだ。
それも名刺やら表札やら役所の書類やら全部変えるとなると大混乱だ。あっちこっちに補助金をばらまかないと・・って全員殺すよりははるかにましなのだが。

自分の姓を「大佐藤」とか「キング佐藤」とか勝手に変えりゃいいものを、他の佐藤姓は全員抹殺したいのだという。

それではじまるのが、リアル鬼ごっこ。
兵隊が鬼で逃げるのが佐藤姓の人達。
鬼ごっこのルールは晩の11時から午前0時までの1時間。
期間は一週間。
この時間帯には全ての交通機関をストップ。公共交通機関だけではなく車も単車も使用すれば即死刑。
この交通機関の無い静かな1時間を佐藤姓の人達は鬼から逃げ回る。
兵隊達も佐藤を捕まえなければ、死刑。
いやがおうにも兵隊は必死になって佐藤を殺戮し、この世から佐藤姓が消滅するだろうというのが、この馬鹿王様の思いつき。

というより、実際にそういう展開になっていく。

なんとも荒唐無稽なむちゃくちゃな設定に、この本をそのまま読み続ける値打ちがあるのだろうか、などと考えてしまうがせっかく手元にあるのだから、と一時間を目途に一気に読んでまう事にした。

一週間の深夜一時間の鬼ごっこで、500万人の佐藤さんを全員抹殺出きるとは到底思えない。
日本という国、国土は狭いと言われるが、存外に広いのだ。

国内線の飛行機に乗って地上を見るとなんと緑豊かな山林の多い国土なのかとびっくりさせられるほどだ。
近隣の他の国、例えば中国でもモンゴルでも地上を見ればまっ茶、茶。岩石砂漠の地域が緑の大地よりもはるかに多い。

横浜の住宅街やら大阪の十三近辺などというところで逃げ回る場面だけが登場するが、
あの山林の中に一週間籠っていれば、そうそう捕まるもんでもないだろう。
日本には昔から山の民という人達が居てその末裔は現存している。
山の民なら逃げ場所などいくらでも提供してくれるだろう。
なんせ彼らは時の権力にあまり従順ではないのがさがなのだから。

山の民ならずとも横浜や大阪の住宅地の人だって、全てが全て傍観しているわけがないだろう。
人口1億に500万人。20人に一人の割り合い。
現在の正確な割り合いは知らないが小学校、中学校、高校、大学、社会人・・どの場面を思い出しても周囲の知り合いに4〜5名の佐藤さんが居た様に思う。
いや佐藤さんに限らず、田中さんだって、鈴木さんだって、井上さんだって、山田さんだって、山本さんだって・・・いつも周囲に何人か居たっけ。
中田さんだって、中沢さんだって、中村さんだって、中山さんだって、宮本さんだって、秋田さんだって、稲本さんだって、森島さんだって、小野さんだって、高原さんだって、三浦さんだって、釜本さんだって、都並さんだって、三都主さんだって、ラモス瑠偉さんだって、呂比須ワグナーさんだって、ってなんかいつの間にかサッカー歴代日本代表選手に変ってる?

そんなことはさておき、知り合い、同級生、友人、親戚、先輩、後輩、ご近所さん、サッカー選手、野球選手、有名人(ファンなら特に)・・・そんな佐藤さんを見て見ぬフリをするか?
あっちこっちでレジスタンスが蜂起するだろう。
日本人はお上の言うことに素直で大人しいと良く言われるが、自分の知り合いが、友人が、何の罪も無いのにこれからお上によって殺されようとしているのだ。
消費税のUPやら年金記録の間違いなどとは全く次元が違う。
必ずや人々は蜂起するだろう。
片や鬼の方の兵士にしても事態は同じだ。
鬼になった兵士100万人、100万人の軍隊って相当な軍事国家だな。自衛隊だって30万人も居ないだろう。その100万人の兵隊の中にも5万人相当の佐藤さんは居るはずで、その仲間達を狩れるか?
ともに戦い、訓練して来た戦友、部下、教え子、上官にそれぞれ佐藤さんは何人もいるだろう。そんな仲間を狩るか?
狩る前にクーデターを起こすだろう。

なんせ、その王様は誰からも尊敬されていない馬鹿王様なんだし。

もっと言えば、王さんがその策を言い始めた途端に側近が、とうとう気がふれたか、と王さんを幽閉してしまうのが最もありそうな話で一般的な対応か。

100万歩譲って、物語通り兵隊による狩りが行われたとしよう。
鬼ごっこで佐藤さんを捕獲出来なかった兵隊もまた死刑なのだ。
双方命がけ。

ところがこの物語、夜の11時までの間は佐藤さんはのんびり自宅で過ごし、夜の11時前に、街へ出て鬼と遭遇して逃げ回る。

鬼さんも命がかかってるなら、もっと必死になるんじゃないのか。
夜の1時間だけと言いながら、11時が来れば即座に捕獲出来る様に、昼に尾行し、居場所を押さえて置こうとするだろう。
逃げる方だって、それは同じじゃないのか。
結局、夜の1時間だけの捕獲時間と言いながらも、24時間見張り、24時間見つからない様になってしまうもんじゃないのか。

全く突っ込みどころが満載過ぎて書ききれない。

この本、果たして千円という本代の値打ちがあるんだろうか。
1時間で読み飛ばされた後おそらく二度と読まれる事も無いだろうに。

ところがなんと、この「リアル鬼ごっこ」、本が大ヒットして更に映画化もされたという。

なるほど、確かに映画にはぴったりかもしれない。
本だと突っ込みたくもなるが映画なら全て許される。
映画こそ一回こっきり観るためだけに1800円也を払うわけだ。
それに比べて本代が惜しいはずがないっか。


あまりこの本のことを褒めていないような文章になってしまったが、なかなか感動的なシーンもあるので、そのあたりを紹介しておこう。

妹も佐藤姓。妹を助けるために土地勘の無い大阪へやって来て、そして14年ぶりの再会を果たす。
この妹との兄弟愛と絆。

命がけで自分を助けてくれた、かつての悪ガキ仲間の同じ佐藤姓の友人との友情と絆。

初日は遭遇さえしなかった鬼が、日に日に佐藤さんが減ってくるに従って遭遇する確率も高くなりだんだん追っ手の数が増えて来る、その恐怖。

ただねぇ、結末は誰しもそれだけはあまりに当たり前だろうから、と結末の選択肢からはずすと思われる結末。

なんとも・・。


ちなみにこの本のジャンルはホラーなのだそうだ。
確かに30世紀と言ってもSFでも無ければ、ファンタジーでもミステリーでも無い、いくら該当するジャンルが無いからって・・・ってなことをつらつらと考えるにつれ、おぉ、やっぱりホラー以外の何者でもないように思えてきた。

リアル鬼ごっこ 山田悠介 著


01/Dec.2008