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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Nov.2017
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ダークエルフ物語 R.A.サルバトーレ

R.A.サルバトーレのベストセラーの『アイスウィンド・サーガ』(確か本の帯には世界2千万部と書いてあった様な・・)の中に登場するダークエルフの二刀流剣士ドリッズトは孤高の人でなんですよね。

テンタウンズ(十の街)に迫る危機を事前のキャッチし、街を危機から救うのですが、その手柄は他人のものとし、フードを被って街の人からは相変わらず無気味がられる役割り。

ダークエルフ物語は、ドリッズトの過去を語る物語なのです。。
ダークエルフ物語を読めば、なるほどドリッズトはだから一人で居たがる理由が良くわかります。
人々がダークエルフを嫌う理由も。

ダークエルフの住む街「メンゾベランザン」。
3万人のダークエルフ(ここではダークエルフと言う呼称より寧ろ「ドロウ」という呼称の方が良く登場します)が生き、その内貴族は十分の一の3000人。
その貴族の中でも最上位にあたるのが、「8分家」と呼ばれる一族達。

各家を支配するのが「慈母」と呼ばれる一番年長の女性。
そう。このダークエルフの社会、男尊女卑ならぬ女尊男卑なのです。
女が男に命令し、同じ兄弟姉妹であっても男が上に立つ事は無いのです。

下位の家は常に上位を狙い、上位でも力の弱い家、蜘蛛の女神ルロス(これが彼らダークエルフの神らしいのですが)に不興を買った家などは下位の家からの標的となります。

標的とはつまり
「闇撃ちにしてその一族を惨殺する。一人の生き残りも残さない」というのが決まりで、事前に攻撃する事がばれたり、一人でも生き残りを出してしまえば、今度は攻めた側が潰される。そういう掟の社会なのです。

闇撃ちはあざやかであれば誉められる事であっても責められるべき事ではありません。
そしてどこの家が闇撃ちをかけたのかはわかりきっていてもそれを表だって話す事は禁句。

闇撃ちの様なやり方は家と家だけで無く、個人と個人でも日常茶飯事。
裏切り、だまし討ち、虐殺・・・この世で邪悪と呼ばれるものが常識の世界。

学校らしきものもあり、そこでは徹底的に地上世界の住人、つまりエルフや人間を「悪」として教えています。
いわゆる洗脳教育ってやつですか。

子供達は人間やエルフを邪悪なものとして刷り込まれ、疑いすら持たない。
そのあたりは独裁政権が仮想敵国を作って、それを悪だ悪だと教育する姿ですとか、攻撃的な新興宗教が廻りは全て敵というのに似ているのかもしれませんね。


ですが、ちょっと待って欲しい。
邪悪が正と教えられる世界なら、それよりも悪は寧ろ尊敬すべき存在なのではないのでしょうか・・・。
などという突っ込みを入れてしまってはファンタジーは読めませんよね。
要は彼らにとっては敵。それだけでいいのです。とにかく敵。

この一家が一家を襲撃する、というのは何も家族だけで行う訳では無く、互いが抱えている兵士同志が戦って、最後にその一族を殲滅するのです。
第一分家ではその数1,000名。ドリッズトの生まれたドゥアーデン家でも300名の兵士を抱えています。

しかし、とここでもまた突っ込みを入れたくなってしまいます。
兵士、日本の武家社会で言うところの武士は鎌倉時代に遡ってもいわゆる本領安堵、所領支配を保障する御恩に報いるために仕えるものじゃないの。

それが戦国時代、江戸時代であろうと何百石何人扶ちという処遇を与えられての奉公ではじゃないの?

このダークエルフの裏切りの世界にあって、兵士は一体全体何を保証してもらっているのでしょう。
そもそもこの地下の暗闇の世界で農業が行われているはずも無く、何を持って食い扶持にしていたのでしょう。

それにですよ。裏切りが「正」の世界で兵士の数など、何の意味があるでしょう・・・。
ウン。突っ込みはいくらでも出て来ますが、そんな事ではファンタジー小説は読めません。

すっと流そすのが十全。
あれ?十全って決り文句誰かの口ぐせだった様な・・・いえ単なる気のせいです。

この裏切りや虐殺を美徳とする地下都市メンゾベランザンにあって、唯一その思想教育に馴染まなかったのが主人公のドリッズト・ドゥアーデン。

唯一というのは正しくは無いですね。
その剣術の師範であり、実は慈母マリス・ドゥアーデン(ドリッズトの実の母親にあたるのですが、お母さんなどと言おうものなら速攻で鞭が飛んで来ます。あくまで慈母マリス様なのです)にもてあそばれたザクネイフィン(実の父親)もまた、その社会に馴染めない人間でなのでした。

旧ソビエト連邦では無いですが、その思想に疑問を持つ人は亡命か流刑地しか有り得ないですよね。

という事で、ドリッズトはその世界を飛び出す事となった訳ですが、なんともはや40年生きているにしてはもドリッズトの思考のなんと幼い事でしょう。

500歳は生きるというダークエルフの寿命からすれば、40年なんてまだまだ子供なのかもしませんが・・・。
虐殺世界の反動なのでしょうか。
一切の殺生を禁じてしまっては地底世界で生きていけるはずも無いでしょうにね。

いずれにしろそういう過去(前提)があっての『アイスウィンド・サーガ』のドリッズトだったわけですね。

『ダークエルフ物語』は、第1巻「故郷、メンゾベランザン」、第2巻「異郷、アンダーダーク」、第3巻「新天地、フォーゴトン・レルム」の3巻からなります。
3巻積み上げてみるとその分厚さを見てちょっと臆してしまいそうですが、読み始めると一気に読めてしまいます。

『アイスウィンド・サーガ』をご存じない方もじゅうぶん楽しめる本だと思います。
ちなみにこの文字色、読みづらいでしょ。
ドリッズトの目の色、ラベンダー色に指定させてもらっています。

ダークエルフ物語(1) 故郷、メンゾベランザン  R. A. サルバトーレ (著)  笠井 道子 (訳)


21/Apr.2007
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