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Oct.2017
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天佑なり 幸田真音

高橋是清と言う人、明治、大正、昭和初期の他の人が主人公の話にちょくちょく登場する。
中でも印象に残っているのが城山三郎氏の「男子の本懐」だろうか。
そこでは悪く書かれているわけではないが、結果としてあまりいいイメージではない。

浜口雄幸と井上準之助が命がけで進めた金解禁。

浜口が倒れた後、内閣総辞職で次に発足した犬養毅新首相と高橋是清新蔵相が、浜口と井上の成果をひっくり返し、真逆の金輸出再禁止に踏み切ってしまう、というもの。

財政を拡大し、景気を刺激するのが得策か、財政を縮小し国の借金を減らすのが最優先か?
結構、いつの時代に手も議論されて来ていることのようだ。

いつも登場はするが、いざ高橋是清と言う人そのものにスポットを当てた本というのを読んだのはこの本が初めてだ。

この人、「人間万事塞翁が馬」を地で行くような人生。

若い頃にアメリカに渡るが、訳も分からずにサインをしたものが、自分を見売りする契約書で、危うく奴隷としての生涯を送ったかもしれない。

帰国後いくつもの仕事に就くが当初は教師の仕事が多い。

その教え子には後にバルチック艦隊を破った帝国海軍の名参謀となる秋山真之だの、日本銀行本店ビルや東京駅やら両国国技館やら名だたる名建築物を残したこれまた天才辰野金吾なども居たりする。
後にそのお教え子辰野金吾の下で下働きをしたりもする。

それにしてもこの人の若い頃ってどれだけ簡単に仕事を捨ててしまっているのだろう。
今の就活に悩む若者が知ったらさぞかしうらやましい限りだろう。

若き新校長として赴任する時などは、一度も登校することもなくやめてしまっている。

それでも次の仕事が向こうからやって来る。
それだけその当時は英語に堪能な人が如何に重宝がられていたか、ということなのだろう。

現場主義で現場を見て無駄をとことん省くこつを心得ている。
とにかく発想が柔軟で、前例がないという反対は、軽くぶっつぶす。
前例がなければこれを行う事でそれを前例とせよ、と。


知的財産についても早くから目をつけ、日本で概念すらなかった商標や特許を守ることが急務だと、米、英、独の実情を研究した上で日本で初となる特許庁の創設をやり遂げてしまう。


そうかと思えば相場で失敗し、またペルーでの鉱山採掘事業に失敗。(本来彼自らの失敗ではないかもしれないが)そんな失敗の一つ、一つを全て自分の糧に変えてしまう。


欧米にも広い人脈を築き、日露戦争の時など、日本に戦争を賄えるだけの外貨がほどんどなかった時に、この人の才覚で戦費の4割以上を外債発行で調達して来てしまう。
日本が負けると誰しも思う中でやり遂げてしまうのだから尋常の沙汰ではない。

途轍もない才覚だ。


冒頭の浜口雄幸、井上準之助VS高橋是清ならば、高橋是清を間近で読んだからだけではない。
明らかに高橋是清に軍配があがることはその後の歴史を見れば明らかである。


明治日本には、国家の危機と言う時に、本当に稀な天才が何人か現われ、国家を救うのだが、高橋是清もそんな天才の中の一人だろう。


天佑なり 幸田真音(こうだ まいん) 著


04/Sep.2013
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