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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Nov.2017
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ようこそ、わが家へ 池井戸 潤

主人公氏は銀行からその取引先の企業へ総務担当部長として出向してきた出世街道からはずれた男。
元々が銀行マンであるところが、池井戸潤らしいところ。

この主人公氏は小心者で、小心者の主人公男が珍しく、人に注意をする。
電車の乗車時に皆が並んでいる中、並ばずに割り込みをかけて来た男に注意し、その車両への乗車を阻止する。

ところが、その男、何を思ったか男は電車を降りてバスに乗り換える時にも乗車してくるではないか。
明らかに後を付けて来る。

電車で注意された事を根に持ってわざわざ付けて来るか?
それだけじゃない。

バスを家から離れたとことで降りて、走って家へ逃げ帰るのだが、翌朝には庭の花壇が踏み荒らされている。

さらに次の朝には郵便受けに重症を負わされた猫が入れられ・・。

これは気持ち悪いというよりは怖いな。

さらに次は車が傷つけられる。

家族しか知らないところにある封筒からお金が数枚抜き取られている。

こうなると怖いというよりは怒りだな。

こういうことが家で起こっている間に出向した先の会社では、どうも営業部長に不審な行為が見受けられるようになり、社長へも意見具申をするが、社長にはあくまでも一銀行員=他所者としか見てもらえない。

ここでも、普段なら余計なことはしないのが信条の主人公氏、部下の女性の叱咤激励に励まされ、とうとう営業部長の意図的な背信行為の真相に辿りつく。


この作家、銀行ものではヒットを飛ばしている。
大ヒットの「倍返し」などはその代表作なのだろうが、この作品、「倍返し」のような強さやインパクトは無い。
普通の人が普通に生きていてちょっと普通じゃないことをやった時の見返りの恐怖。
こちらの方が作品としての魅力は大きいなぁ。



ようこそ、わが家へ  池井戸 潤 著


03/Jul.2014
最終退行 池井戸 潤

大ブレイクした半沢直樹の原作者によるもの。
もちろん舞台は銀行。
羽田というあたり一帯がことごとく赤字の中小企業ばかり、という環境の支店が舞台。
赤字企業に囲まれていても、本部からは他の支店同様に一律の成績UPを求めてくる。

ここの副支店長が主人公。
この人同期でTOPと言われながらも、思った仕事への配置転換をさせてもらえず、支店の融資係からからまた別の支店の支店の融資係へと支店のドサ廻りばかり、唯一の救いが支店を変わる都度少しずつ役付きが上がっていることか。

「最終退行」というのは最後に支店を退出すること。 最後に一人だけ残って残業を片づけ、各部屋の戸締りをし、消灯を確認し、施錠をして退出する。
この副支店長氏、毎日毎日が最終退行なのだ。

融資課長と副支店長を兼任し、毎日、現場にも出ながら、下から上がって来た種類の決済も行わなければならないので、普通の時間に終われるはずもない。
支店長がまた仕事をしないし、仕事が出来ない。
支店長から押し付けられた仕事をグチ一つこぼさずにこなす副支店長氏。

丁度不良債権処理に追われている頃の話なので、本部の意向は貸し渋りどころか貸しはがしにまで加速して行く。

この地域での優良得意先。
主人公氏をはじめ現場の人たちが永年良好な関係を築いてきた有料顧客企業。
そんな企業に今期赤字決算を出したからといって、貸している金を返せなどとは、現場レベルの感覚では有り得ない。
いや現場レベルでなくても有り得ないだろう。
赤字を出したところで会社がつぶれるわけじゃない。
寧ろ、貸しはがしをしてしまった方が、よほど相手の資金繰りを圧迫する。

そんな企業からの貸しはがしをためらっていると、支店長が出張って、一時返してもらうだけ、とだまして返却させてしまい、仕舞いに相手企業は不渡りを出し、その社長一家は離散。そしてその先社長が自殺するに及んで、この副支店長氏はこの銀行に見切りをつける。

そこからが反撃の始まりだ。

倍返しの半沢と似てなくもないが、こちらの話の方がかなりリアリティがある。

また、第二次戦の終わり間際に旧日本軍が海底へ隠したとされるM資金探し、M資金詐欺の話が彩りを添える。



最終退行  池井戸 潤 著


12/Nov.2013
ルーズヴェルト・ゲーム 池井戸 潤

野球で一番おもしろいゲームは7−8のゲームなのだそうだ。

ルーズヴェルト大統領がそう言ったとのことで、7−8のゲームのことをルーズヴェルト・ゲームと呼ぶのだそうだ。


この物語は、家電メーカーの下請け部品工場の会社の野球部の野球部の物語。

大企業でもないこの会社の野球部が、かつては都市対抗野球の名門チームだった。
所属する選手はプロ野球には入れないが、野球をすることで会社と契約を結んだ、契約社員。プロにはなれないが、アマチュアでもない、職業野球人達。

納入する大手企業からは単価下げを要求され、運転資金を借り入れている銀行からは人員削減を要求される。

そこへ来てのリーマンショック。
取引先は大幅な生産調整に入る。

もはや、会社の存続上、明日が見えない状況の中、当然野球部の存在も安泰ではなく、その存続をめぐって、役員会でも常に俎上にのぼる。


野球部の物語と言いながら、実は中小・中堅企業の生き残りをかけた戦いの物語なのだ。
創業者からバトンタッチされたまだ若い社長は、銀行の要求通りにリストラをすすめて行くのだが、創業者はそれに反対はせずにただ一言。
「仕入れ単価を減らすのはいいが、人を切るには経営者としての『イズム』がいる」と。
キッチリとした経営哲学があってのことなのだろうな、とも取れる。

企業の業績などいい時もあれば悪い時もあるに決っている。

その業績のいい時には人を増やして、業績が悪くなりゃ、人を切ればいい、みたいな考え方が蔓延してやしないだろうか。

いったい何のためにその会社はあったのだろうか。

人を切ってまでして営業利益を出したところで、その存続し続ける意義とは何なのか。

株主のため、か?
非上場会社である。

残った社員のためか?

それとも経営陣のためか?それなら本末転倒もいいところだ。

もはや、物語は野球部云々などの話ではなくなっている。

野球部の存在は、この会社が負け続けの中、7−8のルーズヴェルト・ゲームに持ち込めるのか、の小道具だと言ってもいいぐらいだ。

会社の存続する意義とは何か、が問われている。

そんなことを感じさせてくれる一冊なのだった。



ルーズヴェルト・ゲーム 池井戸 潤 著


14/Feb.2013
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