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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Jul.2017
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友情 武者小路実篤

恋と友情が絡んで大変なのは、
今も昔も、男も女も同じなのだなぁと思いました。

ざっとあらすじ。
主人公の野島はまだ駆け出しの作家。
彼は友人の妹、杉子に恋をします。
野島にとって杉子は理想の女性。
想いはどんどん深く、妄想はどんどん大きくなっていきます。
野島がそんな恋心を打ち上げられるのは、親友の大宮にだけでした。
大宮も野島と同じく物書きで、作家として成功しつつありました。
互いに刺激しあい、心を許せる親友同士。
大宮は野島の恋を応援し、成就する事を願います。
しかし杉子は大宮を、大宮も杉子を想うようになり、
その事実が野島に知らされたとき、野島は大きく絶望します。

野島の杉子に対する気持ちはとても強いのですが、
杉子を理想化しすぎているのが難点です。
杉子という女性は野島が思うような理想の女性ではなく、かわいらしさもあれば、時にはずる賢さもある普通の女性のように思われます。
そんな杉子が野島に理想化されることを嫌い、大宮に惹かれていくのは仕方のないことだと思ってしまいます。
なんせ大宮という人は、頭がよく器用で、変な癖は無いけど芯のある男性。
女性に対して変にやさしくも無ければ、偉そうでもない自然体の人。
どう考えても野島より魅力的なのです。

しかし物語は野島の強い思いを土台に突き進んでいくので、
野島の恋が成就してくれれば、と願うようになっていきます。
しかし残念ながらそうはいかず、最後にドカンと事実が突きつけられます。

それまで冷静で、杉子に対する愛情を微塵も感じさせなかった大宮からの報告は、かなり衝撃的です。
その事実は彼の口からではなく、大宮と杉子の手紙のやり取りから知る事になります。なんだか知らなくてもいいことまで、二人の恋の盛り上がりを知らされます。
こんな形でなくてもいいのにと思いますが、友人にすべてを隠さずにぶつかって、どのような反応をされようともそれに耐える、というのが大宮が選んだ親友に対する姿勢なのでしょう。
野島は大宮のしたことに対して心から怒り悲しみます。そしてこれから待つ孤独を嘆きます。
その様子は痛々しいですが、同時にすがすがしさを感じます。
それは野島と大宮の間に隠し事は何一つ無く、互いに正直な感情をぶつけ合っているからだと思います。
二人にとって一大事なのだけれど、きっとまた立ち直る日がくるであろうと思えます。

最近は携帯でお手軽につながる友人関係ですが、これだけ本気で向き合う情熱があってこそ、本当の友人、友情と呼べるのかなと思いました。


友情 武者小路実篤著


27/May.2011
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