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May.2017
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エリートの転身 高杉良

「高杉良」と期待して読んだ人にはなんともまぁ残念すぎる作品。

エリートの転身、エリートの脱藩、民僚の転落、エリートの反乱という四作からなる本。

「エリートの転身」
一流の証券会社に入社し、同期の中でも出世頭。
将来の社長の器とまで言われながらも支店長を辞して、一からチョコレート職人に、という話。
支店長を辞める時の辞め方がナントモ。

会社をやめようと思っていた矢先に部下が不祥事を起こしたので、これ幸いとばかりに支店長として責任をとって辞任します、って退職する。
なんだろう。その辞め方って。
同僚や取引先や上司からも、なんて責任感の強いやつ。なんと潔いやつ、と惜しまれながらも実はうまく辞められたとほくそ笑んでいるような男に誰が共感するんだ。
カブ屋が嫌いになりました。とか、チョコレートを作りたいから、と言った方がまだ共感出来るし格好がいい。
チョコレート職人として一からスタートする努力は見上げたものだろうが、転身までの道筋がなんとも頂けなくて、到底本にするような話じゃないだろう。

「エリートの脱藩」
石油化学業界のトップ企業だが、オイルショック後の脱石油で業績低迷、一流企業をやめて中小企業へ転職する男。
低迷する業界だけになんとか起死回生のために粉骨砕身する話ならまだしも、会社のトップから慰留を受けながらも、ダメ業界から去って行きましたって話のどこに共感が得られるのか。

「民僚の転落」
大手繊維会社でエリートコースを歩いた男が、上司との付き合いゴルフでのしぐさが気に入らないから、と京都へ左遷されるという話。
京都支店での仕事は一からで呉服をたたんだり、正座で接客したりということを基本として教えられるのだが、そういう仕事がこの男、よほど気に入らなかったらしい。
郷に入れば郷に従い、基本を一から教えてもらえるというのはとてもありがたく大切なことだろうに。
そんな仕事は自分の仕事ではないとばかりに、飛ばされた理由だのばかりを探し出そうとするこの男もやはり共感を得られない。

「エリートの反乱」
企業内の派閥争いの結果が飛び火して一人の課長が懲戒解雇になろうかどうか、という話。
役員の理不尽な扱いに対して、戦いを挑む様は他の三作よりはまだ読み応えがある。
だが、まだ懲戒解雇を言い出されたわけでもないのに地位保全の仮処分申請を社長あてに内容証明で送りつけるという行為に出たこの男。

そんなことをして残っているよりも、それだけ仕事の出来るエリートならさっさと見切りをつけて転職すりゃいいのに・・・という気持ちになってしまうのは何故だろう。

どれも実話が元だったのかもしれない。
最初の「転身」などは社名も実際にある名前だけにまさに実話なのだろうが、どれもこれも、人を感動させたり、共感させたり、といういつもの高杉良作品とは程遠い。

小編は小編なりにちょっと山椒がピリリと効いていても良さそうなのだが、この作家、大作でなければ扱う素材も雑になってしまうのだろうか。
やはり高杉良は長編・大作に限る。




エリートの転身 高杉 良 著


18/Nov.2013
不撓不屈(ふとうふくつ) 高杉良

なんと言っても実名なのである。
出て来る、出て来る。渡辺美智雄、津島雄二、小渕恵三、小泉純一郎、旧社会党の平岡忠治郎、勝間田清一、旧民社党の春日一幸、国税庁直税部長時代の鳩山威一郎・・・
こういう実名を目にすると、この「不撓不屈」という本、飯塚毅という税理士や税理士事務所、実物をモデルにした小説でも何でも無く、実話でなければならない。
これが実話だとしたら、居たのであろう。一介の税理士の立場でありながら、国家権力そのものと言っても良いキャリアバリバリの大蔵官僚を敵に廻して、戦った人が。

税は1円も余分に払うべからず、また1円の払いの漏れも有ってはならない。
完璧主義者であり、自身の仕事について100%の自信が無ければそんな事は出来ないだろう。
とは言うものの企業にしてみれば、そんな事よりも実務優先で、税務官僚を相手に真っ向から、などと言う気はさらさらなく、なるべく穏便に素早く片づけてしまいたい、というのが本音ではないだろうか。
企業たるもの最終的には何らかの社会貢献をする事を目的としているであろうから、税金を少々余分に払ったところでそれは許せる様な気がする。
許せないのはやはり年金制度だろう。そもそも年をとってから還元して欲しい人の為にある制度であれば、強制加入では無く任意加入という姿が好ましい。
これまで集めて来た年金運用資金を勝手に使い切ってしまった上で、若い世代が年金に加入しないなら財源が無いなどと言うのは運用して来た側の責任であって、若い世代の責任では無い。いっその事税金に一本化してしまったら良いでは無いか・・などと考える今日この頃である。

不撓不屈、この男ただ者では無い・・確かにそうだろう。
国家権力と真っ向から対峙する税理士。
この飯塚毅という人が非常に清く、正しく、凄まじい人である事は言うまでも無いが、
何故、税理士なんだろう・・とやはり思ってしまう。

貧しい布団屋の倅として生まれ、本来であれば布団屋を継ぐところだったのが、あまりに成績優秀にして、先生をしてその専門分野で打ちのめしてしまうほどに優秀な人が選ぶ道が何故、税理士だったのか、結局税理士という立場であったからこそ、この人が如何に優秀で理路整然と正しい事を行ったとしても、自分より年下の政治家である渡辺美智雄などに頭を下げ、政治家の力で助けられたのでは無いか。

ちなみにこの本を取り上げてみようと思ったのは、この本が映画化される話を聞いたからであるが、実はもう昨年に映画化されたのだという。

別段賞与という名の賞与引当金が争点である。さぞかし一般受けしない映画だったのではないだろうか。

上記は誤りでした。昨年に映画化は誤りでこの6/17に封切りだそうです。観に行かなければ・・。
ps.この文章かなり税理士や税金、税務署について突っ込んだ事を当初書いていたのですが、あまりに不穏当、という事で半分以下に割愛されてしまいました。

不撓不屈(ふとうふくつ) 高杉良著


16/Jun.2006
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