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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Dec.2017
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ペテロの葬列 宮部みゆき

老人によるバスジャックの話からはじまる。

老人がほんの数人しかいないバスを拳銃一丁で乗っ取り、運転手を外へ出してしまい、残った乗客相手に話しかける。
乗客達もまさか撃たれるとは思っておらず、身の上話などをし始めて、その老人に親近感さえ持ち始める。

まさかこのぶ厚い本が、その事件の流れだけで出来あがっているとは思わなかった。

この本にはいくつか詐欺に関する会社が登場するが、唯一実名で書かれているのが、豊田商事。

豊田商事と聞いて思い出すのは、会長が籠るマンションの前に大勢のマスコミやテレビカメラ。それを押しのけるように二人の男達が窓をぶち破って、中に押し入り、会長を惨殺して出て来たというあの公然と行われた殺人。

あまりにも異様な光景だった。

豊田商事のペーパー商法そのものよりもその事件の方が記憶に残る。

その後、いくつものマルチ商法やペーパー商法の会社が事件になったが、必ず言われたのは豊田商事の残党がしでかした、という話。

この本ではそういうマルチ商法を行う連中の前身は実は高度成長期に社員教育にと持て囃された自己啓発セミナーのインストラクター達のなれの果てだったと書かれている。

バスジャックの老人はそういうセミナーの有能なインストラクターだったということで、人の心をコントロール出来てしまうのだということなのだが・・・。

それでもこのバスジャック、本当に話術だけでコントロール出来ていただろうか。
確かに話はうまいが、運転手が降りざるを得なかったのも乗客に向かって拳銃が向けられているからだし、他の乗客がバスジャックに対して同情的な気分になったのはやはり非力な老人だからだし、最終的に言うことを聞いているのもホンモノの拳銃の銃口を当てられていたからじゃないのだろうか。


主人公の杉村という男は、結婚の約束をした相手が超巨大コンツェツンを率いる会長の娘。結婚を許してもらうための交換条件として、それまでの仕事を辞めてコンツェツンに入る。
娘婿だからと言って出世街道を歩まされるわけでもなく、むしろ出世街道からはずされた人が流れつくような部署。社内報を発行する編集部に配属される。

これまでの仕事や実の両親と疎遠になってまでしてした結婚なのだが、コンツェツン内でのやっかみの声だの、相手側の親族の集まる場でのいごごちの悪さだの失ったものの大きさに対して得るものは少ない。

妻と幼い娘の笑顔ぐらいだったはず。


この物語、全てが片付いた後のエピローグのようなページの中で、その妻から主人公の杉村氏への信じがたい裏切りがある。

最大のペテロは実は妻の菜穂子だった?


五ペテロの葬列 宮部みゆき 著


01/May.2014