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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Sep.2017
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ことり 小川洋子

身寄りのない男性の遺体が鳥籠を抱えたままの状態で発見されるところから物語は始まる。
男性は近所の幼稚園の鳥小屋の掃除を永年やっていた人で、人からは「ことりのおじさん」と呼ばれていた。

このおじさんには幼い頃から鳥のさえずりを話し言葉として理解する兄がおり、その兄もある時を境に、人間の言葉を捨て、「ボーボー語」という自らが編み出した言葉でしかしゃべらなくなる。
何を言っているのか誰にも理解出来ないのだが、不思議な事にまだ幼い弟だったおじさんだけにだけは理解できたのだ。


やがて兄弟は成長し、弟であるおじさんは保養施設の管理人の仕事につき、兄は仕事をするでもなく、弟の世話になる。
弟は昼時ですら毎日欠かさず帰宅し、家で待つ兄とサンドウィッチの昼食をとる。

兄は、ひたすら幼稚園の鳥小屋の前で小鳥のさえずりを聞く。
唯一の行動はといえば、昔から行きつけの薬局へ必ず水曜日に行き、棒つきキャンディーを買ってくることぐらいだろうか。

周囲の人から見れば、小鳥と話している、などと理解されるわけもなく、失語症の兄と自閉症気味の弟の二人が世間と隔絶した生活を送っている、としか見えなかっただろう。

超絶してしまった人間というものは強い。
人の目を気にすることも無い。
誇り高く気高いほどに小鳥を理解し小鳥を愛している。

弟はというと人と話せてしまうので、兄よりは不利ではあるが、それでも小鳥に対する愛情は人並み外れている。

生涯独身のまま小鳥だけを愛したこの兄弟。

行動半径もまるで鳥籠の中の小鳥のように狭く、日々の行動もほとんど変わりがない。

兄の亡くなった後の幼稚園の鳥小屋は弟が引き継ぎ、その掃除を園長に任され、おじさんは無償奉仕で引き受ける。


孤独でせつない人の話と思えることだろう。

ところが、それを決して可哀そうな人たちとして描かないのが小川洋子さんの持つ独特の世界。

小鳥と共に幸福感で一杯の人生を送った二人。

他人の目というものは誠にあてにならないものなのだ。



ことり 小川洋子著


14/Jun.2013