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Dec.2017
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星月夜 伊集院 静

東京湾で見つかった若い女性の死体と老人の死体、二人の身元がわれても、どこにも接点が見当たらない。

この物語には二人の誠実な老人が登場する。

一人は殺害された女性の祖父。

岩手で農業を営むこの老人は息子夫婦を失い、さらに孫娘にまで先立たれる、という降りかかる最悪の事態の中、それを黙って飲み込む。

まさに昨年の大震災後に見せた東北の人たちを想起させるような哀愁が漂う。

もう一人は遺体となった出雲の鍛冶職人の老人。

この人には凛とした強い意志を感じさせられる。

この二つの被害者がどこでどう結びつくのか、それは終盤になってようやくわかるわけだが、ここに登場する警察の捜査陣は実によく捜査をする。

無残な死を迎えるに至る、被害者たちの生の軌跡を地道な捜査で明らかにして行く。

地道な捜査だけではなく、被害者やその家族の心情を思う真摯な姿勢が描かれてもいる。

確かに推理小説かもしれないが、推理そのものよりもそれぞれの人間を描こうとしているように思える。

推理小説としてはいかがなのだろう。

貧困の中から這い出して成功を遂げた人間がまだ、若い頃ならいざ知らず、昔の愛した人への執着がどれだけあったにせよ、これだけの成功者が殺人に至ってしまうその安易さがどうにも腑に落ちないが、まぁそういう話も有りでしょう。

あまり、ミステリだの推理小説だのというふれこみを前提に読まない方がよろしかろう、と思います。


星月夜 ホシヅキヨ 伊集院静 著 文藝春秋


23/Jul.2012