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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Dec.2018
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北天蒼星 伊東潤

サブタイトルが「上杉三郎景虎血戦録」
そんな大そうなサブタイトルがついているにも関わらず、謙信の後継ぎとして戦国時代を駆け巡った男などでは全然無い。
謙信亡き後の上杉家がさほど歴史の大役を担っていたわけではないことは承知しているのだが、「もしや?」目新しい観点か?という思いがあった。

で、読み始めてすぐに気が付くのだが、景虎?景虎?景虎?あれっ後継ぎは景勝じゃなかったっけ。
そう。
いつになったら天下を賑やかすのだろう、などと大きな筋書きを期待して読んではいけない。
跡目争いの騒動だけで、これだけの長い話を成り立たせてしまっているのだから。


元々この景虎という人、北条の人なんですね。
北条氏康の子に生まれながらも僧侶への道を歩まされそうになるのを、寺を抜け出してでも武士になろうとする。
そうしたところに越後、相模の(上杉と北条の)同盟話が持ち上がり、その証として越後へ赴く。
言わば人質だ。

妻を娶らない謙信に息子はいない。
それでも後継ぎ候補に甥がいるにも関わらず、その人質を後継ぎ候補NO.1にしてしまう。

この景虎と景勝の跡目争いの戦い、景虎に勝機が無かったわけじゃない、どころか、ずっと敵よりも有利な立場にあって、何度も勝てる場面を逃し続ける。

景虎と言う人、どうも他力本願なのだ。
北条から来たから自身の兵を持たない。

だから持ち上げてくれる家臣団に頼らざるを得ないような解釈で話は進んで行くのだが、曲がりなりにも謙信の後を継ごうという意気込みがあるから戦っているのではないのか。

馬上から声をかけて来るような無礼な家臣は一喝すればいいだろうし、「武将が自分勝手に判断して攻め込むのが越後の戦い方」などと変な割り切り方をして結局、敗戦敗戦を繰り返す前に何故、自身が先頭に立って指揮を取らないのか。

所詮は将の器では無かった人ということなのだろう。

作者は景虎をとことん「善」、景勝をとことん「悪」と描くが、この戦い方や家臣へのおもねりでは、この戦いにいくら勝ったところで、この将では上杉はその代で滅んでいたのではないだろうか。

悪人として描かれた景勝は、といえばその後、豊臣の五大老の一人となり、関ヶ原の後は外様となるものの、江戸時代の赤穂浪士の討ち入りの時にだって、吉良上野介は上杉を頼りにするほどに力のある大名として家は永らえる。

数年前のNHKの大河ドラマで直江兼続が取り上げられてたっけ。
結局、数回しか見なかったが、あれはあれで、いくら直江兼続の兜に愛の字があるからって、民のため家族のために愛を貫くだのって、良くもまぁ恥ずかしくもなくあんな展開が描けたものだ。
最近の大河ドラマはホントに嘆かわしい。
平清盛はどうどうと白河法王の落とし胤で確定みたいなところから始まってしまうし・・。
昨年のお江の方なんて現代ドラマを歴史ものに焼き直しただけかい。みたいなつくりだし。
もはやあそこまでやるなら、よくドラマのエンディングに映し出される「この物語はフィクションであり・・」っていうやつ、絶対に出すべきだろ。
「このドラマは実在した人物を元に描いたフィクションであり、実際の歴史的事実とは無関係です。なんら根拠資料はありません」ぐらい流しておいて欲しいものだ。

とはいえ、この本も謙信から後継ぎに指名されなかった景勝が小姓で陰謀をめぐらせると天下一品の少年、樋口与六(後に直江家を継いで直江兼続となる)のはかりごとを用いて謙信を殺してしまうという展開、まるで大河ドラマ憎しとばかりに・・・。ちょっと作者さん作っちゃいましたか。



北天蒼星 上杉三郎景虎血戦録 伊東潤 著


09/Feb.2012