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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Nov.2017
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骨音 池袋ウエストゲートパークV 石田衣良

●骨音

骨音って、こんな発想はどこからきたんだろう。

動物の骨から打楽器を作るなんていうことは古代から行われていたことらしいし、今でも現存しているものもある。

有名どころではキューバの打楽器「キハーダ」。
馬やロバの下顎の骨から作られるということで有名だ。
近頃ではネットでも買えるようになったらしい。

中国の自治区の一つの広西自治区。
そこに住むチワン族には古くから「馬骨胡」という琴のような楽器を奏でる。
これは馬の大腿骨を使っている。

モンゴルみやげで有名な「馬頭琴」。
みやげにしてはかさ張るから結局は買うのをあきらめたりする。
これも少し前までは馬の骨で作られていたと言われる。
現在売られているものは木製しかないだろうが。

やはり骨ならではの音というものがあるのだろうか。
まさに骨の髄までしみ込んで来る、というような音なんだろうか。


モンゴルの「馬頭琴」の場合は音のためというよりも愛馬を偲ぶ意味でその骨を楽器にまでして身近に置きたかったという意味の方が強いらしいが。



全国、至る所で中高生達がホームレス狩りを行っているのだという。

彼らはホームレスの連中なら税金も払ってないし、臭いから狩っても罪にもならないだろう、などと言う刷り込みでもされて来たのだろうか。

近所の河川敷で見かけるのはホームレスというよりこれは立地条件抜群の立派なホームじゃないのか?と思えるようなもの。
自転車が鎖につながれていて洗濯物も干してあって入り口には「入るな!」「覗くな!」の張り紙看板などもあったりして・・・
こういうのは特別なのだろうな。

余談となったが、ホームレスだから骨ぐらい折ったところで構わないだろう、という発想よりも人の骨をバキっとなるぐらいにまで折ってまでして収録した音が人をそんなに熱狂させる音楽に使用される、っていう発想、その思いつきそのものにまず驚いてしまう。

ネタばれのようなことを書いているように思われるかもしれないが、そんなこともないだろう。コンサート会場のシーンあたりで大抵の人はこのタイトルと考え合わせれば、ホームレス骨折り犯人が誰かなんて、想像ついてしまうだろうし、また作者もそのつもりで書いているんだろうから。



●キミドリの神様

もう一つ、これはなかなかの面白い発想だなぁ、と思ったのが「キミドリの神様」のローカル紙幣。

そもそも貨幣が誕生したのは商の時代で、物々交換の煩わしさを貝がらを貨幣としての物との交換価値のあるものとして普及させたところからはじまる、と中国古代史を描く宮城谷氏が書いていた。

貝がらが貨幣なら海沿いの人々はぼろ儲けじゃないのか、という疑問が湧いてくるなぁ。
宮城谷さんはそこをどう説明していたっけ。

それはこういう出来立ての紙幣だって同じ事が言えるだろう。

物と交換するに値すると誰しもが判断ようになりさえすれば、それは貨幣・紙幣として成立してしまう。
紙幣を流通させる、つまり価値を認めさせるまでがいけば発行元は大勝利。ぼろ儲け間違いなしだ。
国が発行元でない紙幣なんて世界中にあるだろうか。
買い物をした時についてくるポイントなんかは商品に代わる価値はあってもその店限定だろうし。


喫茶店へ行ってそのローカル紙幣でお勘定ができる。
雑貨屋へ行ってそのローカル紙幣で買い物ができる。
もちろん、お金ではないので消費税は無し?
小売店も円貨の収入でも外貨の収入でもないので、所得にはあたらないから所得税もない、ということになるのだろうか。
いやいや、国税当局はそんな甘くはないだろう。
そもそも金券ショップやそこらで円に交換できてしまうのがよろしくない。
果物屋でりんご一個をこの紙と交換した。それだけなら物々交換をした、つまりりんご1個は売上につなげられなかったわけだ。
とはいえ小売店はただで物を配っているわけじゃない。交換した紙はお金としての資産価値のあるもの。
だとしたら売上の代金回収を債券で回収した様な扱いとなるのだろうか。

いずれにしても税金対策には利用できないだろうし、この主催者はそんなことを目的としていたわけではない。
弱者救済などというときれい事の様に聞こえるが、働きたくても仕事がない、お金のない貧しい若者がボランティアへ参加した時の対価(報酬)としてこのローカル紙幣を受け取る。

金はないが、そのローカル紙幣でメシが食える。服が買える。
金なんてなくても豊かな生活がおくれるじゃないか。


そういう主催者の発想、つまりは作者の思いつくところがなかなかにしておもしろい。


他に「西一番街テイクアウト」、「西口ミッドサマー狂乱」など四篇が収められている。

「IWGP」(池袋ウエストゲートパーク)のシリーズものとしては、レイヴと呼ばれる参加者が一晩中踊りまくる音楽イベントとドラッグを扱った「西口ミッドサマー狂乱」なんかが、メインなのかもしれない。

それでも発想のおもしろさから上記二編を取り上げてみた。

骨音―池袋ウエストゲートパーク<3>  IWGP:池袋ウエストゲートパーク:池袋西口公園シリーズ  石田 衣良 (イシダ イラ) 著
11/Jul.2008