電車の中でのほんの些細な出来事(その二)

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あれは昼間の阪急電車。結構空いていて、一つのシートに2〜3人が座っている程度。
私は目を閉じ、少々うたた寝をしようと目をつぶった。
まさにその時、同じシート3人分ほどの空間を離れて座っていた男が立ち上がり、こちらへつかつかと歩いて来たかと思うやいなや、いきなり私の足を蹴り出したのだ。
「お、おまえ、俺の事を馬鹿にしただろ!」
とわめきながら、トウキックで私のふくらはぎのあたりを蹴り始めた。
なんなんだろうか?目をつぶりながら、ニヤけていたわけでもありまいし。
完璧な被害妄想癖だ。
こちらも学生時代伊逹にサッカーをやっていた訳では無い、男のキックなど痛くもなんとも無いが、そのままではたまらないので、
即座に立ち上がった。
男よりこちらの方がはるかに上背がある。
男は完璧にびびった様子。
三歩ほど後ろへ退きながら、
「てめえ、やる気か!」
何故か男は大阪弁では無かった。
「一体、なんのこっちゃねんな」
とこちら。
男はこちらが喧嘩モードになったと勘違いしたのか、やけに慎重。
「こらー。これでもくらえ」
とキックを繰り出すのだが、三歩下がっているのに一歩しか踏み出さないでしかも短足なので、ことごとく、こちらへはとどかない。

他のわずかな乗客を見わたしてみると、なんとかこちらへ飛び火しない様に、とひたすら目を合わさない人。
うつむきながら笑いをこらえてヒソヒソ話をするカップルなどが目に入った。

こちらも面倒なので、つり革を持った状態で、男の方を向き、何もしない事にした。
男はびびりながらもわめきながら、とどかないキックを繰り出す事を繰り返していた。

としている間に次の駅に到着。「淡路」という駅だった。
どこで聞き付けてきたのか、淡路駅から駅員が乗り込んで来ると、男を電車の外へ連れ出し、何故か私も同じ様に外へ連れ出されてしまった。
そのまま男は数人の駅員に連行されながら、まだわめきながらどこかへ連れて行かれた。なんの事は無い、一本電車を無駄にしただけで人助けでも何でも無い。
ちょっといかれた人との出会いでした。