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読み物あれこれではスタッフが各々勝手きままな読書感想文を書いております。暴言・無知・恥知らず・ご意見はいろいろお有りでしょうが、お気に召した方だけお読み下さい。
   
Feb.2018
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蜜蜂と遠雷 - 著

音楽を文章で表現する。
果たしてそんなことが可能だろうか。

日本のある地方都市で行われるピアノコンクール。
世界の一流への登竜門のようなコンクール。
この本、その一次審査から二次、三次、本選と、ほぼ、そのコンクールだけで成り立っている。

そこに3人の天才ピアニストが登場する。

一人は自宅にピアノを持たない少年で著名な音楽家の推薦状を引っ提げて来る。
彼の奏でる音楽は、まるで彼がそこで作曲し始めたかのような、自由さがある。
彼の弾くピアノに、他のコンテスタントは触発されて行く。
皆が感動するピアノを弾くのだが、それは必ずしも審査員受けするものではない。
だが、もう一度聞いてみたい、とは思わせるので、審査を勝ち抜いて行く。


一人はかつてジュニアコンクールで圧倒的な実力を発揮していた女子大生。
子供ながら先々の講演予定がびっしり入っていた彼女なのだが、マネージャーのような存在だった母を亡くしてしまい、その後の舞台をドタキャンし、以降、表舞台から消え去った人だ。
その彼女が幼い時に見出したもう一人の天才。
一流のピアニストに師事し、コンクールでの勝ち方を知りぬいた本命中の本命。

その三人がほぼ主役なのだが、その音楽に感動させれるのは「元消えた天才少女」が奏でるピアノ。

文章を読んでいるのに、その音楽に感動して涙腺が緩んでしまった。
こんなことは初めてだ。

この本、コンクールを舞台に数々の人間模様を描いているが、この世界の裏側を至る所で垣間見ることが出来る。

コンクールに出るにはもうとうが立ったとも言えるような社会人も出場する。
もともと若い頃はピアニストを目指していた人なのだが、今や結婚もし、子供もいる中、最後の挑戦との思いで、仕事をしながら寸暇を惜しんで練習し大会に臨む。
その練習をし、というのも簡単じゃない。
音大生ならいくらでも環境はあるだろうが、ピアノをまともに弾く場所がない。
楽譜を買うのも高くつく。
レッスンなど受けようものならレッスン料も・・。

小さい頃から親が環境を与え、時間を作り・・、とそもそも、かなり恵まれた環境の人にしか挑戦権はない。それでも予選に辿り着く前に大抵は落とされる。

ごくごく限られた天才たちだけが予選まで到達できる。

フィギアスケートの選手たちを連想してしまった。


果たして、音楽を文章で表現するなんて可能なのだろうか?という疑問をこの作者は見事に払拭してくれた。
見事と言うしかない。


蜜蜂と遠雷 恩田 陸著
08/Feb.2018
狼の牙を折れ 門田隆将

最近の大規模なテロと言えばパリだのロンドンだのニューヨークだのと、ほぼ日本から遠く離れた地で発生しているが、テロの発生件数にランキングがあるとしたら、1970年代後半の日本はかなり上位ランキングされていたのではないだろうか。
1974年東京丸の内のと言う日本のオフィス街の中心で起きた三菱重工ビル爆破事件。
そのビルだけでなく周囲のビルからも窓ガラスが降り注ぐ死者8人、重軽傷者376人の大惨事。
同年 三井物産爆破事件。17人が重軽傷。
同年 帝人中央研究所爆破事件。
同年 大成建設本社爆破事件。
同年 鹿島建設爆破事件。
翌1975年 間組爆破事件。
同年4月 オリエンタルメタル社・韓産研爆破事件。
同年4月 間組爆破事件。
同年5月 間組爆破事件。

大企業ばかりを狙ったこの立て続けの爆破事件、東アジア反日武装戦線 「狼」を名乗る組織、「大地の牙」を名乗る組織「さそり」を名乗る組織が次から次へと起こし、犯行声明を出したもの。

この本は、その組織を追い続けた公安組織の捜査を徹底取材したドキュメンタリーである。
今なら、どこにでもある監視カメラである程度、足はつくのだろうが、当時はそんなものはない。
捜査員が足を棒にしてようやくその主犯格の男たちに辿り着くが、そこからがまだまだ大変。彼らへの行確(尾行や面会者をさぐる)は慎重に慎重に行われて行く。
日々、どうのような行動をとるのか。何時にどの道を通って何時にどのルートで帰宅するのか。
その日々の行動と違う時が別の仲間との接触の可能性が高い。

今のようにどこにでも監視カメラのある時代ではない。
一旦、追尾に失敗してしまえばまた一からやり直しになってしまう。

特ダネを狙う新聞記者たちとの攻防もなかなか熾烈だ。
全ての容疑者をほぼ同タイミングで一勢に確保しなければ、一人でもメディアにすっぱ抜かれてしまえば、もう普段通りの行動は行わなくなる。
証拠隠滅の恐れもあるし、確保も困難になる

そうして行確を続ける間にもまた別の企業爆破事件が起きる。

捜査員たちの執念でようやく三つのグループの犯人たちの確保に成功するのだが、あろうことか、この犯人たちをハイジャック犯の要求に応じて超法規的措置にて釈放させられてしまうのだ。

捜査員たちの苦労はどこへやら。さぞかし悔しかったことだろう。

こうして、日本は世界中にテロリストを放ってしまうのだ。

どうにもわからないのが彼らの心理だ。彼らは企業を爆破することが本当に世の為、人の為などと信じていたのだろうか。
特定宗教に嵌ったわけでも無ければ、金銭目的でも無い。
有名になりたかったわけでもなんでもない。
学生運動を行う学生でない。
外目には、日々勤め先との往復をする、ごく普通の勤め人たちばかり。

この事件、まだ終わったわけではない。
世界中に拡散したテロリストたちの何人かはまだ、世界のどこかで生きている。

狼の牙を折れ  門田隆将 著
02/Feb.2018
ナツコ 沖縄密貿易の女王 奥野 修司

与那国という島、日本の領土でありながらも防空識別圏は台湾にある。
自国の領空は自国の防空識別圏内にあるのが当たり前だが、戦後のドタバタで、米軍政府は与那国という島の存在に気が付かなかったのか適当に空の線を引いてしまって、それがいまだにそのままとなっているのだそうだ。

与那国という島、地図で見れば一目瞭然。本土はもとより沖縄よりもはるかに台湾に近い。

敗戦までは与那国も台湾も日本に帰属していた。
だから隣町へ行く感覚で与那国の人たちは台湾へ渡っていたしそれは敗戦後も米軍政府が気に留めない島ならなおのこと同じだったのだろう。

今は閑散としたこの与那国が最も栄えた時代が戦後の7〜8年間。
島の通りは那覇の国際通り並みだったという。

沖縄よりも台湾の経済圏内にあった与那国が密貿易の中継地として最も適していたのだろう。

密貿易というと、麻薬の取引でも・・などと連想してしまいがちだが、決してそんないかがわしい類ではない。日本が戦争に負けて、東京も大阪も焼野原だが、沖縄は国破れて山河無しの状態だったという。
焼野原になった後も日本で無かった時代が続くのだ。進駐軍であるアメリカの軍政府は、日本との取引も海外との取引もさせない。それどころか群島同士間の商売も禁じてしまっている。

まるで沖縄全体を収容所だとでも思っていたのだろうか。

日本本土は戦後に復興していくが、沖縄の戦後とは日本人から忘れられた戦後じゃないか。全く知らなかった。

メシを食うためには物々交換ででも密貿易をせざるを得ない。

そんな中で一番抜きんでていたのが、このナツコ(金城夏子)と言う女性。

最新の高速船を持って、八重山、石垣、与那国・・・の沖縄の各群島や本土の和歌山、神戸、台湾、香港、フィリピンなど各地を飛び廻り、誰よりも大きな商いをしかける。

会社組織を作ってからの商いでは沖縄で流通する全小麦粉の半分以上を商っていたというから、もう総合商社なみだ。

面倒見が良く、きっぷが良く、先見の明があり、決断が速く、行動力がある。

この時代を生きた沖縄の人でナツコの名前を知らない人は居なかったという。
でありながらもどの文献にも登場しない。

著者の奥野修司と言う人、このナツコを追って取材すること12年。
それだけの歳月をかけてやっと書き上げたのだという。

何が彼をそこまでさせたのだろう。

司馬遼太郎が坂本龍馬を見つけた時のような気持ちだったのだろうか。

司馬遼太郎は誰を題材にしてもストーリーにして創作してしまうので、読み物としてははるかに読みやすい。

奥野と言う人はノンフィクション作家だ。創作は交えない。
この本、時代背景などは各種の文献から拾っているが、ナツコに関する記述は全て探して探してやっと見つけた人たちからの証言によってなりたっている。

だから証言者の順なので、時代が行ったり来たりする。
そこが若干わかりづらかったりもするが、当時の沖縄とその周辺のこと、何より分かりやすく記されているのではないだろうか。

巻末に参考にした文献の一覧があるのだが、半端な量じゃない。


ナツコという人もすごい人だが、追いかけた著者の執念もまた凄まじい。



ナツコ 沖縄密貿易の女王 奥野 修司 著
09/Jan.2018
この命、義に捧ぐ 門田隆将

台湾といえば、一時、尖閣の問題では領有権をめぐり、意見の対立はあったものの、漁業協定の調印を経て沈静化。

東日本大震災の時などは200億をも超える義援金を送ってくれた台湾。
その額たるや世界一なのだ。

日中国交回復後、国レベルでは日本はずっと台湾に冷たくしてきたというのに常に親日的な台湾。

まさかその背景にこの根本博中将がいたからだとは思わない。(なんせ彼の存在は台湾でもほとんど知られていないのだから)戦後、日中の国交がどうであろうが、民のレベルではずっと日本人の心が親中よりも親台で有り続けたからなのかもしれない。

この本の主役、根本という将軍、戦時中は中国大陸。駐蒙軍司令官。
8月15日の玉音放送にて日本軍は全て銃を置くわけだが、根本司令官だけはソ連の本質を見抜いていた。

日本人全員の安全が担保されるまで絶対に武装解除は行わない。

関東軍などはとっとと武装解除を行ったがために、ソ連に蹂躙され、婦女子は強姦の後、殺害され、男は奴隷扱いの労働力としてシベリア抑留。
子供たちは、中国人によって奴隷扱いで売られ、そのまま残留孤児となった。

それに比べて、駐蒙なので内蒙古だろう。ソ連からの猛攻を諸に被るだろう地域の部隊が武装解除しない。
完璧な命令違反なのだ、全責任は私が取る。邦人を守れ!と。

約一年かけて根本将軍は最高責任者として、在留日本人の内地帰還と北支那方面の35万将兵の復員を終わらせ、日本軍の降伏調印式に調印し、最後の船で帰国した。

この一事を持ってしても日本にとっての英雄であることは間違いないのだが、なかなかそうはならないのが、戦後の日本。

元軍閥と罵られ、これだけの人でありながら、食うのにも困るような有り様。

この話、これで終わりではない。

蒋介石率いる国民党軍が毛沢東率いる共産党軍に敗北に次ぐ敗北でとうとう台湾に退避した状態。そこも守り切れるか。と言う時に根本の元に密使が来る。
中国からの引き上げ時に恩義を感じた蒋介石からの頼みとあらば・・と命を捨てる覚悟を持って小さい漁船で密航。何度も座礁しながら台湾まで辿り着き、顧問閣下として厦門の防御部隊に加わるのだが、根本は厦門は守りきれないと判断し、金門島で戦うことを進言し、その戦略を立てる。
勢いを得てまさか負けるとは思っていない共産軍を金門島での根本の作戦で完膚なきまで撃滅し、結果的に台湾を守った。

門田氏がこの本にするまで、ほとんどその存在を知られていなかった根本と言う人。
この本ノンフィクションのジャンルなのでほぼ事実に基づいて書かれたものだろう。
こういう人の存在があったからこそ、今の台湾があるのだとしたら、知られてはいなくても何か互いに根っこのところで互いに親密な気持ちが心根のどこかに埋まっているのかもしれない。

大震災の時に支援を下さった台湾の人達にもちろん感謝だが、それだけではなく、ワールドベースボールの大会で戦った相手の台湾チームに数多くの「感謝TAIWAN」の横断幕を掲げ、感謝の気持ちを表した日本の人達にも誇りを持てた。

そんなことを感じさせてくれる一冊だった。


この命、義に捧ぐ 門田 隆将著
27/Dec.2017
桜風堂ものがたり 村山早紀

全国の書店員さんはほぼ全員応援するのではないだろうか。

老舗だが時代遅れの百貨店の中のテナントの書店。
その書店にはカリスマ書店員が何人もいる。
主人公の青年はその本屋で学生のアルバイトからはじめて、10年勤務。

書店というのはその売り場売り場を任された者のカラーが棚に反映されるものらしい。
取次店から毎日、山のように配信される本、それらは一定期間の間に売るか返本してしまわない限り、取次店に引き取ってもらえない。
毎日、毎日、本の入替作業、大変な仕事だ。
おのずから売り場の人間の個性が棚作りに反映されて行くのだろう。
来た本を棚のどこに配置するのか。
出版される前から、どの本に目をつけてどれを版元や取次店に依頼するのか。
売り場責任者の裁量次第だ。

主人公の青年は目立たない存在ながら、宝探しの名人と異名をもらうほどに隠れた名作を見出す能力を持っている。

ある時、万引きの少年を追いかけて、その少年が事故に遭ってしまったことから、「行き過ぎだ!」そ騒ぎはじめられ、その噂がネットを駆け巡り、店の迷惑、百貨店の迷惑になるからと青年は辞めてしまう。

そこで以前よりBLOGで知り合い、後にインターネットの世界だけで親しくしていた桜風堂という地方の本屋を訪ねるのだった。

現代の活字離れの大元の原因を作ったのがインターネットの普及と言われている。
本屋がどんどん潰れていく原因になったのは、活字離れだけではない。
電子書籍の登場も一因だろうが、amazonのような通販大手がどんどん本を販売する。

地方の品揃えの悪い書店が立ち向かえられる相手ではない。
それでも書店員は、自らPOPを作ったり、イベントを催して見たり、直にお客様と触れ合うことで、本の温かみを伝えたり・・。
などなど書店に来てもらってでしか出来ないことは何か、を模索し、日夜苦労しているわけなのだ。

それなのにそれなのに、この本の登場人物たちは、SNSを多用し、BLOGやメールなどインターネットをフルに活用する。
本来、書店にとって大元の元凶だったはずのインターネットと仲良くしているわけだ。

もはやインターネットが元凶だなどと、言っていられない時代なのだろう。
共存しなければね。

書店員さんたちがお薦めする本のTOPに来るのが本屋大賞。

全国の書店員さんたちはこの本に本屋大賞を受賞してもらいたかっただろうな。

でも、受賞すればあまりに身びいきなので、ちょっと遠慮したのだろうか。


桜風堂ものがたり 村山 早紀著
03/Oct.2017
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